日本の政治史で最大の住民投票となった「大阪都構想」の開票結果が17日深夜に判明し、僅差で反対が賛成を上回った。出口調査によれば70歳代以上の反対票が大勢に影響を与えたともいわれるが、データなどを精査するかぎりは、普段の国政選挙などと同じで若年層の不戦敗が影響を与えているようだ。
賛成69万4844票、反対70万5585票という大接戦で結果は出た。まず、現行制度下24区の区別による内訳もあるが、賛成11、反対13とこちらも接戦だった。ただ、住んでいる地域で富裕層や高額所得者か、そうでない層という分け方は難しい。というのも、大阪府は北摂エリアの方が富裕層が多いからである。
◆賛成:11
淀川区、東淀川区、福島区、北区、都島区、西区、中央区、浪速区、
城東区、鶴見区、東成区
◆反対:13
西淀川区、此花区、港区、大正区、住之江区、西成区、天王寺区、西成区、
生野区、東住吉区、平野区、生野区、旭区
そのために、年齢別で見る方がよりわかりやすいだろう。まず、大阪市が公表している、年齢別の人口推計は次のとおり(昨年10月1日時点)。
20代 32万5010人(男15万9007人、女16万6003人)
30代 37万9719人(男18万7879人、女19万1840人)
40代 40万8282人(男20万3839人、女20万4443人)
50代 30万4597人(男15万3414人、女15万1183人)
60代 35万2285人(男17万7811人、女17万4474人)
70代以上 48万3人(男19万6708人、女28万3295人)
朝日新聞・朝日放送による住民投票の合同出口調査を基にすれば、賛成率は次のとおりとなる。
20代 61%
30代 65%
40代 59%
50代 54%
60代 52%
70代以上 39%
そこから、投票率を100%とした場合の賛成票の票数は次のようになる。
20代 19万8256
30代 24万6817
40代 24万886
50代 16万4482
60代 18万3188
70代以上 18万7201
合計 122万830
一方、反対票の票数は次のようになる。
20代 12万6753
30代 13万2901
40代 16万7395
50代 14万114
60代 16万9096
70代以上 29万2801
合計 102万9060
仮に朝日グループの出口調査を人口にそのまま当てはめると、賛成票の方が多くなる。実態としては高齢者が強いのではなく、普段の選挙と同じように若年層の不戦敗という公図は変わらなかっただけ。
ただ、自民、公明、民主、共産と反対に相乗りで組織票が働いていることも否めない。そう考えれば、賛成派の善戦と言えなくもない。大手マスコミが最後まで情勢を読み切れなかったのは、組織票がまとまり切れなかったために、票読みができにくかったことは考えられる。
一般的には県と県庁所在地の都市とは折り合いが悪い。そこへ来て、県庁所在地が政令指定都市の場合は権限と予算規模がさらに大きいために、県と同じ機能も持つ。そもそもは、政令市を抱える自治体は多かれ少なかれ、二重行政の部分を含んでいることは否定できないものだ。
大阪市の場合はこれまでにも二重行政の解消の提案は何度かなされてきた歴史があり、今回がまったく初めてではない。そのたびに強硬な反対に晒されて、具体的なアクションが起きることはない歴史が繰り返されてきたが、橋下市政では初めて住民投票までこぎつけた。在阪マスコミでかつて大阪市を担当した記者は「個人的に好きな市長は関さん、橋下さん」と語るなど、わかる人には改革派は好まれる。
ただ、改革派は長続きしないのが大阪市で、反対勢力に潰されるのがオチだった。関淳一氏は大阪市のプロパーとしては最高位の助役となり、改革に期待も寄せられた。だが、地下鉄民営化などで抵抗が強く、思うように改革はできなかった。その後、3選を目指すが、元アナウンサーの平松邦夫氏に敗れた。
橋下氏も任期満了まで職責をまっとうするが、すでにリベンジを狙う平松氏は、いつでもスタンバイOKとも言われている。都構想がつぶれた後の大阪市の未来はどのようになるか。