ギリシャにプエルトリコが逝き、ポールソン氏大損確定

 デフォルト観測が高まるギリシャと、実質的にデフォルトを宣言してしまったプエルトリコ。最も損失を被ることが予想されるのは、両国に投資しているジョン・ポールソン氏のポールソン&カンパニーだろう。


ジョン・ポールソン氏
 ポールソン社はグローバルマクロによる投資で、特定の地域や対象に偏った配分をするために、こういう大当たりを引くことも出てくる。ギリシャについては大手銀行ピレウス、同じくアルファの株式を保有。株価は前者はここ1年間で4分の1に、後者は半分になっている。両行ともに13年には資本増強が行われ、株価も上昇に転じたこともあった。しかし、昨年後半からは株価は再び下落に転じており、米フォーチュン誌によれば、損失額は1億6100万ドル(約197億円)にも上るという。

 また銀行以外でも、1億3700万ドルを投じた最大手水道会社アテネウォーターの株式を9.9%保有。しかし、政府債務から肝心の資金を集めることができずに経営難になっているという。

 ギリシャは2009年に債務残高を政府がごまかして発表していたことが判明し、財政危機が明るみに。その後は、EU、IMFによる約12兆円の緊急融資が実行されたことで、一応の猶予期限を与えられたことになる。

 そこで投資に踏み切って大成功したのが、ダニエル・ローブ氏のサードポイントだった。2012年にギリシャ国債に10億ドルの買いを入れ、政府の買取によって5億ドルの利益を得ていたとされる。これを飛躍のきっかけとして、現在の地位を築いている。この年のギリシャ国債の利回りは30%を超えていたこともあった。

 ポールソン氏の読み筋では2013年にギリシャ経済は底打ちしていくというシナリオで、2014年に株価は上向いたこともあったが、今から振り返るならば12年の投資が最も良いタイミングではなかったか。この投資については、ヤニス財務相が自身のブログ上で一昨年、サードポイントとポールソン氏について触れており、ポールソン氏が12年にドイツ国債への投資で儲けそこなったこと、二番煎じを狙ってギリシャの銀行に投資してきたことについて批判を展開している。

 他にもギリシャへの投資で大きな損失を出したところでは、元国務長官ヒラリー・クリントン氏の長女チェルシー氏の娘婿ベズビンスキー氏が運用するイーグルベイル・パートナーズは50%近い損失を出したとされている。

 「中米のシンガポールになる」

 プエルトリコのことをそう評したのも、ジョン・ポールソン氏だ。2009年に知事が財政破綻を宣言したプエルトリコ。わずか5年の間に2度目の破綻となった。米国の自治連邦区でもあり、米国人にはなじみもあり、NYやマイアミなどの富裕層にとっては、カリブ海のタックスヘイブンとして人気のリゾート地になりつつあった。

 ポールソン氏も夏のバケーションを過ごす避暑地でもあり、一時は移住と報道され、慌てて否定の発表を行ったほどだった。ただ、プエルトリコへの投資もすさまじく、昨年に1億2000万ドルのプエルトリコ債権を購入している。また、「セントレジスバイーアビーチリゾート」と「ビーチリゾート&ゴルフクラブ」の株式を取得し富裕層向け高級リゾート建設を推している。

 2007年に米国住宅市場の崩壊に賭けてサブプライムローンのCDSを根こそぎ買い集めて150億ドルの利益を出した伝説に残る取引も色あせるギリシャとプエルトリコの惨状。2015年は大損は避けられないだろう。

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