老後借金生活で脱税、「満月マン」と霊感商法で所得税法違反に有罪

 霊感商法による儲けを脱税したとして所得税法違反の罪に問われた「満月マン」のメンバーの一人であるT(35)と、相棒のI(77)の両被告に対する判決公判が17日、東京地裁で行われた。T被告は懲役1年、罰金1300万円(執行猶予3年)、I被告に懲役10月、罰金900万円(同3年)の有罪判決がそれぞれ言い渡された。満月マンのメンバーが絡んだ脱税として脚光を浴びたこの事件、一方で会社経営の失敗による借金苦から脱税に走る「暴走老人」の姿も浮かび上がってきた。

 6月30日、東海道新幹線の車内で70代の男がガソリンを頭からかぶり焼身自殺した。生前に年金の少なさを嘆いいたというが、受給額は1カ月12万円程度だったという。特に70歳を過ぎて、再就職先が無くなって生活に事欠く「下流老人」に転落するという典型的な例でもある。金のない老後は、惨めさを感じさせる。

 今回所得税を脱税したTは、約3000万円の借金を抱えていた。国民年金の受取額は月6万円。鉄工所の経営に行き詰ったようで、霊感商法で得た収入は納税せずに借金の返済に回していた。また、一部は息子に贈与するなどしていた。経営に失敗した典型的な下流老人でもある。

平成22~24年度の収入と申告額は次のとおり。

       収入    申告額
平成22年度 1686万円 ⇒ 245万円
平成23年度 4567万円 ⇒ 249万円
平成24年度 5239万円 ⇒ 258万円

 ほ脱率は99%という悪質なもので、馬場有美裁判官は「ほ脱率は99%と極めて高率であり、滞納税額が納められる可能性も低い」とした。Iは心臓の手術を3回経験したというが、歩くこともままならない様子。これで霊感商法ができていたのが不思議なくらいだが、実際に対面することはなく、インターネット上で完結することで霊感商法が可能になったということか。とぼけた証言も数々見られ、裁判官とのやり取りは聞くに耐えないものだった。

 裁 いくら納めたのですか?

 I「2000万円くらいは納めています」

 裁 そんな証拠はどこにも出ていないのですけど。20万円納めたという証拠しかないですよ

 I「それはわかっています」

 裁 これはあなたの量刑に響くことですからね

 I「それは響かないです」

 裁 それは私が決めることです

 I「・・・」

 裁 いま何でここにいるかわかっていますか?

 I「・・・」

 裁 いくら脱税したのかわかってないの?

 I「女房に聞くと1000万円と言っていました」

 裁 もっとありますよ

 I「・・・」

 裁 全部で3500万円くらいありますよ

 I「しょうがない。流れでそうなっちゃったんですね」

 裁 どう返すんですか?

 I 「仕事が再開できれば何とか。今の状態なら難しいですね」

 裁 それは計画とは言わないですね。もう結構です

 Iは一事が万事、この調子だったが、相棒であったTからは、肺の手術を4度行い、21歳の時にIと出会い「現在は何不自由ない幸せをてにいれた」とブログに感謝の言葉がつづられている。お互い出会った頃は60代と20代、TとIは霊感商法を行うようになったが、儲かったら税金を納める気がなくなるという心の甘さで、いったいどうやって相談者の相談に乗るというのか。

 現在、複数の相談者から民事訴訟を起こされ係争中。そちらでは、インターネットを使って相談者に対して、波動を送ったり、観音像を販売するなどしていた。波動は1回で10万円、観音像は8万円、被害者の証言によると、マンションの上階の騒音がうるさく不眠症になったことを解決するために300万円を支払ったという。しかし、それでも解決できずに、「上層の神」にお願いすれば解決するといい、さらなる高額料金を請求されたこともあったという。

 Tは約1億4000万円の収入に対して約6000万円の所得税を免れ、ほ脱率は97%と悪質で野澤晃一裁判官は「安易な規範意識は強く批判されるべき」などとした。

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