ドイツ高級車メーカーBMWのオーナー一族の長であるヨハンヌ・クヴァントさんがこのたび、ドイツ国内の自宅で亡くなった。89歳だった。倒産寸前のBMWから現在の礎を築きあげた中興の祖ヘルベルト・クヴァント氏の秘書として夫人として支えた功労者だった。
特にメディア嫌いかと言えばそうではないようで、夫が設立したファミリーの財団では優れたメディア活動を表彰するなどしており、単に目立たないことを信条としていたのかもしれない。
BMWは従業員にも優しい良心的な企業グループとしての評価を定着させた一方で、2007年には、ドキュメンタリー番組でナチス・ドイツを支援し、また強制収容所から徴用した労働者を工場で酷使させて富を築いたとの批判も浴びたことがあった。また、長女スザンネ氏がスイスの銀行員との不倫で、多額の金を脅し取られるなどのスキャンダルもあったが、それでも現在の会社や、ファミリーの地位は揺らぐほどのものではなかった。
現在、BMWオーナー一族のクヴァント家は欧州でも6番目に大きなファミリー企業一族である。同家からは、大富豪に3人が名前を連ねている。
54位 スザンネ・クラッテン 168億ドル
59位 ステファン・クヴァント 156億ドル
77位 ヨハンヌ・クヴァント 139億ドル
※米誌フォーブスによる 長女スザンネ氏、長男ステファン氏
世界的な規模で再編が繰り返される忙しい自動車業界にあって、BMWのクヴァント家が比較的に安定しているのはファミリーの3人で約半分の株式を抑えていることもあるだろう。
欧州最大の自動車グループであるフォルクスワーゲンはピエヒ家とポルシェ家が並び立っていたり、ポルシェはピエヒ家とポルシェ家との間で争いが起きるなどなかなかに大変ではある。また、フィアット・クライスラーグループは、アグネリ家がフェラーリ株を使いさらに支配を強めていこうとするなど、BMWの資本的な安心度は高い。
◆参考:欧州ファミリー企業長者番付