国税庁は今年から始まった国外財産調書の提出状況についてのまとめを発表し、富裕層らの5000万円以上の海外資産の届け出の件数が全国で8184件、総額で約3.1兆円に上ったことが判明した。納税者にとっては制度施行されてから二度目の提出機会となるが、件数、金額ともに大幅に増加した。その構成では有価証券が1兆6845億円となり全体の54.1%を占めていた。割合が大きく上昇したのが貸付金、その他だった。
財産の分類は次のとおりとなる。
・有価証券 1兆6845億円 (1兆5603億円)54.1%
・預貯金 5401億円 (3770億円) 17.3%
・建物 2841億円 (1852億円) 9.1%
・土地 1068億円 (821億円) 3.4%
・貸付金 1164億円 (699億円) 3.7%
・その他 3831億円 (2396億円) 9.5%
合計 3兆1150億円 (2兆5142億円)100.0%
※各種別で四捨五入のため、合計が一致しない場合あり
※()内は前年
どの資産も大幅に増えているが、割合として最も増えているのが、貸付金で前年比66%増となった。その他はアートなどの動産や諸々入るが、こちらは時価がわかりにくいのではと当初は困惑する声も出ていたが、所有を思い出したものや、とりあえず申告しておいた方が安心とのことで申告したものが増えているのか。
貸付金については、以前から見られる海外に設立した子会社に対して行う貸付。利息収入として受け取るか、配当収入として受け取るかケースバイケースだが、どちらかの方法を取っている。一般的には海外子会社が立地する国の税率で日本国内の親会社の受取の手取り額は決まる。
実質的には海外金融機関への預金と同じようなものだが、統計から推測できるのは、単純に海外子会社の数が増えているということか。
また、管内別の件数と財産総額は次のとおり。
◆管内別の件数
・東京局 5382(3755件) 65.8%
・大阪局 1054(638件) 12.9%
・名古屋局 632 (457件) 7.7%
・その他 1116(689件) 13.6%
◆管内別の財産額
・東京局 2兆3501億円(2兆989億円)75.4%
・大阪局 3637億円(1793億円) 11.7%
・名古屋局 1648億円(931億円) 5.3%
・その他 2364億円(1429億円) 7.6%
※()内は前年
東京が占める割合が件数、総額ともに前年よりも減少しており、その他の割合が大きく上昇している。
また、富裕層にとってはもっと厄介な「財産債務調書」が平成27年分(28年3月申告)の申告期限が近付く。従来の「財産債務明細書」に代わるもので、年収の合計額が2000万円以上に加えて、12月31日時点に評価額が3億円以上の資産を保有するか、もしくは総額1億円以上の国外資産を保有するかで申告が必要となる。