不動産オーナーと旅行者をインターネット上で仲介する宿泊サービス「Airbnb」を利用した米国のホスト女性が同サービスを通じて豪邸を貸し出したところ、宿泊と目的を偽ってAV撮影に使用されたとして、制作会社を相手取ってカリフォルニア州の裁判所に汚れなどによる破損や精神的苦痛などの損害賠償を求めて訴えを起こしたことがわかった。日本国内でもホテル不足の解消、さらには空家でもインカムゲインを可能にするなど期待する向きも多い。政府が勧める政策に後押しされる面もあるが、不動産を利用するものだけに、やはり頭の痛いトラブルは起きる可能性があるということを再認識させる事件でもある。
米サイト「スモーキングガン」によると、ホスト女性は今夏、男性が夏休みの宿泊だとして5泊3万ドルで貸し出したという。しかし、契約にはなかった撮影を行っており、汚物などが散乱し施設内に一部破損している箇所もあったという。家は1920年代築のサンタバーバラの高級住宅地に立つ豪邸で、ホスト女性は怒り心頭に発して、カリフォルニア州の裁判所に提訴した。また、後日に制作会社幹部兼出演した俳優がSNSで豪邸の写真をアップしていた。
日本国内でも実は富裕層が保有するセカンドハウスなどをTVなどのロケ用に貸し出す仲介を行う業者はいくつか存在する。ある意味で日本の空家事情を反映するサービスで、オーナーは業者に合鍵を渡すだけで簡単なものだ。制作会社が目的を偽って使用する例もあるそうだが、後始末など使用者がキッチリと行うなど大きなトラブルにまではなりにくいとも聞く。
しかし、今回の例はAirbnbを仲介することで世界中でつながってしまうということにある、今後は国策として民泊が推奨されていることもあり、さらにトラブルの件数が増えることも間違いない。日本では民泊にあたるため特区以外は旅館業法で禁じられているが、国交省と厚労省が解禁を視野に入れた検討を始めた。解決しなければならない課題として挙がっているののが主に次の3点だ。
・近隣住民(ホスト)とのトラブルの回避
・テロの温床にならないような安全面の整備
・既存業者との競争環境の公平性を確保
一点目のトラブルは容易に起こり得るもので、今後は当事者同士の訴訟なども出てくることは想像に難くない。民泊は実態として行政が把握する以上にすでに広まっている。東京都内のあるタワーマンションでは、プールや大浴場で中国語での大きな談笑が聞こえてくる所もあるという。これなどは、外国人オーナーが宿泊用に又貸しを行っているわけだが、日本人オーナーにとってみればたまったものではないだろう。
区分所有法では、「区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めてはいる。それと同時にそれぞれの利益を得る権利も持つ。そのため実際には第三者へ賃貸しているオーナーも多く、仮に外国人旅行者に宿泊させるとしても権利を一部使用したにすぎないという解釈も成り立つ。
また、東京・江東区のタワーマンション「ブリリアマーレ有明」のように管理規約で規制することを定めた所もある。ただし、管理規約自体は取り決めではあるものの、法的拘束力としては限界があるため、どこまで実際にどこまで規制できるのかは現段階ではわからない面は多い。
外国人旅行客が大量に押し寄せて、事件化しそうなものもある。京都府内で観光バスでマンションに乗りつけて、44室中36室を中国人の団体客を宿泊させるというもので、「中国人?ら300人宿泊疑い」として、すでに警察も動く事案にもなっている。あからさまにバス送迎までしたために捜査対象となったが、これほど大規模でなければ捜査対象にはならなかっただろう。
稼働率さえ高ければ、賃貸に出すよりもAirbnbを使う方が2倍、3倍の利益が出る、と謳っており、日本国内にもすでに、Airbnbの代行ビジネスを行う業者もいくつか存在しており、そうした流れは加速していくものとなり得る。
観光客増、空家増という現状に、法的な後押しの流れが始まりそうな中で起きた今回の米国での訴訟は、そうしたリスクの一つとして教訓になりそうだ。