創業家会社売却ランキング 一休400億円、CoCo壱番屋200億円

 最近は日本でも自身が起業した会社をアッサリと売却するトップも増えてきた。特に、高級ホテル予約サービス「一休」創業者の森正文氏はヤフーに持ち株を400億円以上で、カレーチェーン「壱番屋」の宗次徳二氏は200億円以上でそれぞれ売却している。会社が成長の限界を迎える前に、または、第二の人生を歩む前に、会社を売却するという選択肢が一般的になりつつあるが、主に今年を中心としたランキングを見てみることにする。

 創業家の株式売却は事業継承難、後継者難や相続税の問題などでうまくいかない場合に、なされることが多く、中小企業では案件数も多い。ただ、上場企業の場合でもきれいさっぱり売却というケースが出てきたことは、日本の企業風土の変化を表すものでもあるだろう。

 ここ2年間で見ると主なものは次のようになる。

1 一休・森正文 413億円 ⇒ ヤフー
2 gloops・梶原吉広 328億円 ⇒ ネクソン
3 壱番屋・宗次徳二 220億円 ⇒ ハウス 
4 iemo・村田マリ 50億円 ⇒ DeNA
5 雪国まいたけ・大平喜信 10億円 ⇒ ベインC
※敬称略
※その他 なだ万・楠本家  51%  ⇒ アサヒビール

 経営に執着するか、君臨すれども統治せずか、きれいさっぱり売却か。引き際はこの三通りだということになろうか。一番目のケースは亡くなるか、失脚するかという晩節を汚す可能性が最も高くなる可能性もあり、後の二つの方が美しい去り方のように見える。もちろん、四つ目の選択として、株式を売却した後も会社に残って引き続き責任者として事業を行う場合もある。

 最も美しい去り際を見せたのが、「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する「壱番屋」創業者・宗次徳二氏。保有株の売却額220億円だけで見れば最大ではないが、潔さと第二の人生の目標とする社会貢献への意欲は美徳を感じさせるに十分だ。

 自身が幼少のころより施設出身で高校を卒業後にサラリーマン生活を経て、夫人とともに喫茶店経営から始める。そこで出していたカレーが評判を呼び、1978年にカレーショップに参入し現在の地位に押し上げた。2000年に新規株式上場を果たし、2002年からは実質的には代表権のない役職に落ち着き、第一線からは引退し、NPO法人や慈善活動を中心に行っていた。今後は株式の売却資金がこちらの方に向かうだろう。

 金額的に最も大きいものが、一休の森正文氏。今年8月から資本業務提携先を探していたといい、日本最大のポータルサイトを持つヤフーのTOBに応じることが決定し、その売却額は413億円となる。2位梶原氏は昨年、過去のヤミ金での逮捕歴を暴露されたが、かなりの大金を得るイグジットとなった。雪国まいたけはワンマンとして君臨していたが不適切会計により、泣く泣く退場を迫られてTOBに応じた。

 天保元年(1830年)創業のなだ万によるアサヒビールへの株式売却は各方面に衝撃を与えたが、高級ブランドが経営の安定化のために大資本の傘下に入るという見本のような例。無借金経営ながら景気の影響をモロに受けることもあり、リーマンショック以降は厳しい経営を続けていたためか、これもブランドを守るためには仕方がない選択なのだろうか。

 今年はロッテ、大塚家具など創業家の株式を巡るお家騒動も起きているが、創業者が早めに売却すれば、こうしたトラブルも回避しやすい。時代の流れは創業者の旬の時期を一気に置き去りにしていく。そのサイクルが早くなる一方で、その前に大手に売却するという手を打つことは間違いではなく、今後も有力な選択肢となろう。

 企業買収が当たり前の米国での刺激的なストーリーを見ておく。

 昨年の大型買収劇で、フェイスブックに買収されたワッツアップ。創業者のジャン・コーム、ライアン・アクトンの2氏は生活保護受給者から大富豪になるという大逆転の人生を体現している。アクトン氏は30億ドル、コーム氏は68億ドルをそれぞれ手にしている。2人はフェイスブックの就職試験に落ちて仕方がなく起業、そこからわずか5年で違う形でフェイスブックに拾われて大富豪となったような例もある。

 HIPHOPアーティストのドクター・ドレー氏が共同創業者に名を連ねるビーツオーディオは、アップルに買収され、8億ドルを手にしたような例もある。日本よりも数段、ドラマティックである。

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