ヘッジファンドの2015年末の運用資産総額が、約3兆2000億ドル(約383兆円)になったことがわかった。前年末から715億ドル増加した。新規ファンドの設立は829、閉鎖は695で純増。戦略別では、エクイティ571億ドル、マルチ265億ドルとそれぞれ流入があった。難しい投資環境だったこともあり、ファンドマネージャーの40%が運用成績に満足していないと答えているが、機関投資家たちにとっての期待はいまだ大きいようだ。
英調査会社プレキンによると、全体の運用総資産額は約3兆2000億ドルで、新規投資資金流入額は715億ドルとなった。また、閉鎖が695と目立った1年でもあったが、新規スタートも829と多かった。戦略別にみると、エクイティが最も多く571億ドルだった。しかし、こちらは株式市場のボラティリティが高まったこともあり、第3四半期以降は流入ペースが減少しており、2016年は別の戦略が見直されるかもしれない。マルチストラテジーは安定的に資金が入っており、CTAは第3四半期以降は見直されつつある。
◆戦略別流入投資金額
エクイティ 571億ドル
マルチ 265億ドル
CTA 254億ドル
クレジット 36億ドル
イベントドリブン 17億ドル
ニッチ 11億ドル
リラティブバリュー -183億ドル
マクロ -256億ドル
全体 715億ドル
マクロは大手フォートレスグループのファンドが閉鎖するなど苦戦が目立ったように見えた1年だった。特に、コモディティ系のマクロ戦略を取るファンドがマイナス7.24%と大不振だったことが響いている。原油先物市場ではWTIが1バレル=30ドル台に下落するなど底が見えにくい市場に引きずられた。ただ、マクロ全体平均では4.24%とプラスで終えている。
マクロでは投資家の期待が大きい運用会社も誕生した。大御所ジョージ・ソロス氏が率いていたソロス・ファンド・マネジメントのスター運用者だったスコット・ベセント氏のキー・スクエア・グループはいきなり、運用資産45億ドルを集めており、新規ヘッジファンド運用会社としては異例の規模になった。また、マクロと言えば、ブリッジウォーター・アソシエイツのピュアαは健在で、運用資産総額が649億ドル規模になっている。
マクロへの資金流入元の上位は、ファンズオブファンズ24%、財団17%、年金ファンド14%、大学基金9%、公的年金9%となっている。
15年のパフォーマンが満足いくものだったかどうかという問いに運用者は40%、投資家は33%と決して高いものではなかった。 2016年の見通しについてだが、業界に影響を与えるキープレイヤーとして、公的年金基金を挙げている。昨年から、全米最大の公的年金基金カルパース(Calpers、カリフォルニア州職員退職年金基金)が約4000億円分のヘッジファンド投資を引き揚げ。その一方で、同2位のカルスターズ(CALSTRS カリフォルニア州教職員退職年金基金)は、ヘッジファンドへの再配分を検討し始めている。
ヘッジファンド投資を行う公的年金は420に上るといい、また、ピュアαを運用するブリッジウォーターアソシエイツは、公的年金基金からの投資が多いことでも知られており、テールリスクが高まる中での各年金の意思決定に注目が集まる。
また、別の調査では2016年の見通しとして新しい意見が出ている。AIMA(オルタナティブ投資運用協会)によると、いわゆる「ボルカールール」が昨年夏から全面適用され、銀行のヘッジファンド出資の制限も課されているが、ヘッジファンドマネージャーの半分がファイナンスコストが増加したとしている。また75%が今後2年は増加すると予想している。資金集めは10億ドル以上の大手がユリとなるが、中小などは淘汰が進むかもしれない。