資産4兆円のIKEA創業者「服はすべてフリマで買う」! 金持ちが味わう永遠の苦労

 家具チェーンIKEAの創業者で世界有数の大富豪であるイングヴァル・カンプラード氏(89)=写真=が、必要な服はフリーマーケットで購入していることがわかった。「着ているものは、フリーマーケットで購入しているものだ。いいお手本を示したい」と、地元スウェーデンメディアの「Dagens Industri」に語ったもの。カンプラード氏は実際には、税制や投資にもかなり詳しく、スイスには豪邸を構えていたり、プロヴァンスにワイナリーを所有しているが、ビジネスのブランドイメージと、一族の資産を守るために表向きの「清貧イメージ」発言を繰り返さなければならず、エコでシンプルなライフスタイルを提唱するビジネスのイメージとかけ離れないようにする苦労は絶えない。今回の発言もその一環だと思われる。

 「古くなったボルボに乗り続けている」「電車、バスもよく利用する」「ちょっとでも安い所で散髪する」などこれまで様々な清貧発言があった。今回の「服はすべてフリマで購入」という発言も、一連のものである。元々、裕福な一族の出ではなく、「マッチ売りの少年」からスタートして小さな成功を足がかりに、現在のIKEA帝国を築き上げるにいたったカンプラード氏。ビジネスブランドのイメージ死守、ひいては一族の資産を守るための苦労は89歳となったいま現在でも終わることはないようだ。


 現実には、中古のボルボではなく新車のポルシェに乗り、スイスには豪邸を構え、仏プロヴァァンスにはワイナリーを所有する。現在は故郷のスウェーデンに暮らしているが、戦時中はナチスに加担し、また、自国の税制にも異議を唱えたことで、1973年にスイスに移住していた。郊外型の組み立て式家具チェーンという新たな流通の仕組みの業態を生みだしたビジネスの才覚はもちろんだが、一方で金融、不動産などの投資や、税制についてもかなりくわしい。

 300億ドル以上、日本円で約4兆円の資産を築き、過去世界4位の大富豪にまで上り詰めたが、現在はフォーブスやブルームバーグの長者番付に現れることがない。と言うのも、表向きは資産を息子に禅譲しているが、全体の溜まりや流れは巧妙に見えないようにしているからだ。

 過去、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の調査でも明らかになっているが、IKEAのパテント料やフランチャイズ料は、インターイケアホールディングス(ルクセンブルク籍)に入ることになっている。そして、この会社を管理する財団はリヒテンシュタインに置かれている。現在、インター社は三男マティアス氏に禅譲されているが、一族全体の当主になっているかと言えば、まったくそうではない。

 カンプラード一族の統治機構においては、「スティヒティング・インカ・ファウンデーション」というオランダ籍の財団が、イケアの筆頭株主である資産管理会社「インカホールディングス」を支配している。この財団だが、議長カンプラード氏の意向が最大限に反映され、イケアの支配権を握るという。りオランダ籍の財団は、税制が優遇されていることが広く一般に知られているが、大きなメリットは他にもあり、米英よりも公開義務がかなり甘く、さらに敵対的な乗っ取りに対しても防止制度があり、グローバル企業の創業者には天国でもある。古くはグッチがLVMHの買収から身を守るためにオランダ財団を使用したり、様々な用途に使われてきたが、カンプラード一族はそこに堅牢で複雑な統治機構を築き上げ、まさに盤石である。

 こうした所までは、一般消費者には無関係なことでもあるが、本業のIKEAを支えてくれているのは、まさに世界中の一般消費者たちである。イメージダウンは防ぐことは永遠の課題である。フリマの話に戻るが、それにしてもこんな大富豪がフリマに直接買い物に出かけること自体がセキュリティ面などで不安がある。もちろん、代理の人間に買いに行かせていると思われるが、そのコストも掛るので、少しくらい安いフリマで購入する理由はまったく見当たらない。本当にイメージづくりなのか、服に興味がないのかどちらかだろう。

 世界有数の金持ちになっても、永遠に貧乏ぶらなければならない苦労は心中察するものがある。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる