ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が公表した通称「パナマ文書」が波紋を広げているが、その情報の出元は、米著名ヘッジファンド運用者ジョージ・ソロス氏、フォード家の財団や米機関によるものだ、と機密文書公開サイト「ウィキリークス」が断定した。そのターゲットは二通りの見方があり、プーチン大統領、習近平総書記や中東各国の首脳たち、もしくはパナマという国家に対するもののどちらかだと見られている。その一方で、ICIJが現在公開している首脳リストの中に、米国の政治家は現時点では皆無となっている。
ICIJが公表にいたるまでの簡単な経緯としては、南ドイツ新聞への匿名の連絡があり大量の内部資料の受け渡しが行われた。その資料をICIJに提供し調査報道した結果をこのたび公表している。匿名の提供者がだれであるかだが、この主がソロス氏らの意を受けた関係者や、米国の公的機関などである、というのがウィキリークスの告発である。
すでに内容は公開されているとおりだが、プーチン大統領のと親しい著名チェリストのロルドゥーギン氏がタックスヘイブンに複数設立している会社や金融機関を通じて、20億ドル以上にも及ぶ大金を動かしていたという。後にプーチン大統領は自身が無関係であると否定した。どこまでが真実かはともかく、現にアイスランド首相が英バージン諸島の夫人名義の会社を使った取引を行っていたことを認めて辞任するなど、すでに大きな動きも出ていることは確かだ。
陰謀論というようりも背景としてパナマの今回のリークに直結するような事情も存在する。OECD(経済協力開発機構)が協定を各国に勧めている税務情報や金融機関口座の自動交換について、パナマは同意していなかったために、これまで米国などから厳しい批判を受けてきた。今後はまだわからないものの、パナマはこれを受けてOECDの情報自動交換に応じる方向に転換する可能性も出てくるだろう。
一方で、協定に乗り気ではない米国は世界最大のタックスヘイブン国として安泰でもある。その辺の事情が、今年1月にブルームバーグで報道されている。
米国が最大のタックスヘイブン国に、という趣旨だが、ロスチャイルド家の金融持株会社の幹部が行った講演で、節税したい富裕層たちに米国への資産移転を勧めたというものである。OECDの協定には関心がなく、FATCAを要求したり、また、自国に資産を呼び込もうとするなど独自スタンスを貫こうとしている。
ICIJはソロス氏の「オープンソサエティ財団」から出資も受けているが、5月にも追加の情報を投下するとも言われている。すべての案件が違法ではないことは言うまでもないが、史上最大級のリーク事件によって、タックスヘイブンがさらに揺らぐことになるか。