朝日新聞が、ふるさと納税のあり方について社説で触れている。「あるべき姿から逸れている、富裕層の節税策になっている」という内容だ。
ふるさと納税とは、個人が2000円を超える寄附を行ったときに住民税と所得税が還付、控除される制度だ。今は住んでいなくてもふるさとを応援できる、応援したい自治体に納税できることを目的として2008年度に始まったふるさと納税は、寄付額が14年度には389億円に達した。
ふるさと納税をすることでお礼の品がもらえることが広く知られるようになったほか、クレジットカード決済など簡単に行える支払い方法も普及し、少額であれば確定申告が不要、寄付の上限額引き上げなど制度自体も拡充してきた。
ふるさと納税を受けた自治体は税収アップとなり、住民にほかの自治体に寄付をされた自治体はダウンとなるため、各自治体は多くのふるさと納税を獲得できるよう必死だ。
上限額が引き上げられたことで、富裕層にとっては節税策としての効果が高まっている。世帯の家族構成もより金額は異なるが、たとえば給与年収が3000万円を超えるような富裕層は、税の軽減を受けられるのは100万円前後になる。
千葉県の房総半島のほぼ中央に位置する大多喜町は、ふるさと納税をしている富裕層には有名な自治体となっている。ふるさと納税のお礼の品で渡されるのは、「大多喜町ふるさと感謝券」だ。この券は町内のゴルフ場・道の駅・食堂・ガソリンスタンド・ショッピングセンター等の取扱店で使用できる。
大多喜町にふるさと納税をすることで、1日に行う寄付額の6割に相当する金額の券を受け取ることができる。先ほどの例で言うと、100万円近い税の減額を受けるうえ、6割相当の感謝券ももらえる計算だ。
総務省は返礼品(特産品)送付については「寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を要請する」としているものの、お礼の品が充実している流れには変わりがない。
批判的な声はあるにせよ、ふるさと納税のそもそもの目的は「応援したい自治体に直接貢献できる仕組み」であり、東日本大震災や、今回の熊本地震では多くの寄付が集まった。納税者がその使途を選択できるのはすぐれた点だ。
また、ふるさと納税は「税収を稼ぐために頭を使い、行動した自治体が収益を拡大できる」わけでもあり、過当競争の批判はあるにせよ、公的機関が民間企業のように競争下に置かれることは、サービスの質向上といったことが期待できる。
制度のあり方や求められる役割は、常にその時の状況によって変わっていく。