イギリスのEU離脱か残留かの是非を問う国民投票が、10日後に迫った。
「離脱は現実的でない」という声が大半だったが、その後離脱を支持する層は増加し、現在その数はほぼ拮抗しているとされる。
イギリスのニュースサイトが行った直近の世論調査では、離脱派が残留派を10ポイント上回ったとの結果も出ており、結果がどうなるかはまったく予断を許さない状況となっている。
離脱なら生じる様々なマイナス
イギリスがEUを離脱した場合、発生するマイナスは数多い。「EU圏内」ということで行えた自由な経済活動に、様々な制約が生じる。
経済開発協力機構(OECD)は、イギリスの2020年の国民総生産(GDP)は3.3%減少すると試算している。金融市場でもポンドが大量に売られて下落し、世界経済に大きな影響を与えると懸念されている。
イギリスに進出している約1000の日本企業にも多大な影響が出ることは想像に難くない。
イギリスのキャメロン首相はEU残留が得策であると語り、EU加盟のデメリットを、今後はEUの改革を行いなくしていくと表明している。
日本の安倍主張やドイツのメルケル首相も、イギリスにとってEU残留が得策であるとしている。
イギリスが負担しているEU拠出金は約85億ポンド(=1兆3600億円)に上る。
最大の焦点「移民」
イギリスの大きな社会問題となっているのが移民だ。昨年のイギリスへの純移民増は36万人にも及ぶ。実はイギリスが気をもんでいるのは、シリアなど昨今の政情不安により生まれている移民よりも、同じEU圏内の低所得者層の移民だという。
EUには国境を越えた自由移動の原則があるため、イギリスはこうした欧州移民を制限することができない。そして、欧州移民は自国民と平等に扱う義務が生じる。
イギリスに移民が集中することで、社会保障のために国民が支払う税の負担は増していく。
自国のみならず世界の首脳や国際機関もEU残留を支持しているにもかかわらず、離脱派が伸びている理由は、先述のEU加盟による不利益もそうだが、イギリス国民の感情的な部分も大きいだろう。
かつてイギリスが不況真っただ中にいた際、イギリス愛を叫び、街にいる外国人を襲うようなイギリス人の若者グループが多々いたという。
「景気が悪くなると愛国者が増える」のは歴史が証明しているとも言える。
あと10日に迫った国民投票の結果に、政治・経済など世界中の様々な分野から注目が集まっている。