増え続ける「○○ハラスメント」
「セクハラ(セクシャル・ハラスメント)」「パワハラ(パワー・ハラスメント)」これらの言葉はすっかり定着した。
では、こんな言葉をご存じだろうか。
「カラハラ」「オワハラ」「テクハラ」
どれも特定社会保険労務士の野崎大輔氏の著書『「ハラ・ハラ社員」が会社を潰す』に出てくる言葉だ。「カラハラ」は「カラオケ・ハラスメント」本人の意思に反してカラオケを歌うことを強要したり、歌わざるをえないように意図的に仕向けたりすること。また、本人が歌いたくない歌を無理に歌わせる行為。
「オワハラ」は「終われハラスメント」の略で、企業側が採用したい学生に対し、内定を条件に就職活動を終えるよう強く、あるいは遠まわしに迫る行為。物理的に拘束するために合宿の強制参加を求めるなどのケースもある。学生は企業を選ぶ選択の幅が制限されることになる。
現在「○○ハラスメント」と呼ばれるものが増えており、野崎氏の著書には、19個もの「○○ハラスメント」が紹介されている。あまりにも細かく分かれており、ちょっとしたことでもなんでもハラスメント扱いにする昨今の風潮を「ハラスメント・ハラスメント」などと皮肉る声もある。
厳しく注意すれば「パワハラだ!」と訴えられかねない昨今の状況と対処法を、先述の本の著者であり、労働問題を多々解決してきた野崎氏に詳しくお聞きした。
「〇〇ハラスメントは細かく分かれていますが、大本は『セクハラ』と『パワハラ』に分類できると考えています。ちなみにオフィシャルなハラスメントはセクハラ、パワハラ、モラハラくらいであとの〇〇ハラスメントは誰が言いだしたのかもわからないものばかりです」
厚労省の基準は非現実的
野崎氏は語る。厚生労働省が「パワハラ」の基準を出しているが、そこで提示されていることで、あからさまなことはあまり起きないのではないかという。
「たとえば、上司が部下を殴る・蹴るとか、鞄の中身を投げつけて当てるといったことがパワハラの例として挙げられていますが、こういうわかりやすいことは減ってきていると思います。
中小企業でパワハラの研修を実施している会社は少ないですが、さすがに殴ったりする人は少ないと思います。
多くの会社が苦労しているのが、パワハラかどうかの判断ができないようなグレーゾーンの事例です。
基本的に仕事に関する注意指導であればパワハラには該当しないと思います。
注意しなければいけないのは、人格攻撃をしないということです。
『だから三流大は使えねぇんだよな。頭悪すぎて困るわ』『お前は肥満だから仕事が遅いんだろ、まず痩せろ』といった発言です。
勤務態度がよくない、職場の周りの人に迷惑をかけるなどの問題社員を厳しく指導した結果、人事部にパワハラと通報され、上司は以降その社員を指導できなくなってしまった、という例があります。会社の恒例行事をある社員から「参加の強制はパワハラです」と言われ、その一言によって多くの社員が楽しみにしていた行事が開催されなくなってしまったという話も聞きました」