ヘッジファンドをめぐる状況が芳しくない。ここ最近の全体的な運用成績が低下していることに加えて、その高額な手数料がネックとなり、ヘッジファンドに投入されている資金も減っている。
中国、古典手法で驚異の運用成績
そんな中、好成績を挙げているアジアのヘッジファンドがある。ヨーロッパやアメリカが発祥のこともあり、ヘッジファンドはそれらの地を拠点とするものが多く、アジアでは香港やシンガポールなど金融に力を入れる国をベースとしているものがあるくらいだが、それらの国でもない、金融に関しては後進国のヘッジファンドが運用成績を上げているのは注目に値する。
中国人先物トレーダーの王兵氏が運用するグリ・トレンド・アグレッシブ・ストラテジー・ファンドの今年の運用成績は+750%、昨年3月の設定以降ではプラス2100%となっている。
ヘッジファンドがここ最近全体的に低調な分、王氏のヘッジファンドの好成績ぶりはトレンド、平均的なリターンと比べても完全に異質だ。
中国だけに、その運用成績も文字通りケタ違いだ。
王氏は昔ながらの需給分析に基づき、ボラティリティ(変動性)の高い市場で、タイミングを見計らって大きくレバレッジをかけることで高いリターンを実現している。
設定が昨年3月からとまだ期間が短いことに加え、変動性が高く、また一度に動く額も大きい中国を主戦場にしているヘッジファンドゆえ、この先王氏のファンドがどうなるのかは、引き続き見守る必要があるが、これだけの、高いという次元を超えた好成績を現時点で残しているのは、王氏の手腕を証明するものだろう。
人工知能を活用する日本の会社
同じく先物でも、人工知能を使った運用で急成長している日本の運用会社がシンプレクス・アセット・マネジメントだ。同社は5600億円を運用している。イギリスのEU離脱の際も、人工知能が相場を予想、売り持ちで臨んだ結果市場は人工知能の読んだ通りとなり、3.43%の収益を確保した。
「結局機械が正しいんです」
同社の運用責任者、野村至紀(よしのり)氏はブルームバーグの取材に答えた。野村氏は人工知能による売買プログラムを3年以上かけて洗練させた。現在は約35億円を人工知能で運用する、日本初の会社の1つだ。
同ファンドが発足した4月8日から直近までのリターンは1.9%。野村氏は「時間をかけてトレードしていけば徐々に勝っていく」と話し、年率で7%(リスクは9%)を目指す。
コンピュータープログラムを活用した運用は、ルネッサンステクノロジーや2シグマなどが世界的に有名かつ大規模な額で行っている。
シンプレクス・アセット・マネジメントはそれらの会社ほどの評価を得ているわけではないが、運用に成功し続けていけば、評価はあとからついてくるだろう。日本初の人工知能に基づく運用会社として期待が高まる。
野村氏は「機械が正しい」と言っているが、東京大学大学院工業系研究科の和泉潔教授によると、野村氏の手法は専門家による分析と人工知能を組み合わせたものだという。
野村氏は早稲田大学の大学院で物理額の修士を取得し、アクセンチュア、シティグループなどに勤務の後同社に入社した。
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