アメックスプラチナVSダイナースプレミアム、経営者はどちらを持つべきか?

「アメリカン・エキスプレス(アメックス)のプラチナ」といえば、エグゼクティブなクレジットカードとして人気が高い。双璧を成す人気を誇るのが、「ダイナースのプレミアム」だ。


左:アメックスプラチナ(ビジネス)右:ダイナースプレミアム
 この2つは果たしてどっちが得なのか。企業経営者・病院経営者が読者に多い「ゆかしメディア編集部」では、両方のカードを所持するユーザー複数人に話を聞き、調査した。
 話を聞いたのは全員経営者、アメックスはプラチナカード、ダイナースはプレミアムカードを所有している。

ポイントでアメリカ、ヨーロッパに行けるダイナース、中国のアメックス

 評価ポイントは、次の6つとした。

1.ポイント、マイル還元率
2.ブランド力
3.使い勝手の良さ
4.緊急時の対応の差
5.使える店、優待を受けられる店の数やその種類
6.提供されるサービス

1.ポイント、マイル還元率
→ダイナースの圧勝

 クレジットカードの使用で気になるのが「どのくらいポイントがたまるのか」だ。「高額決済者は飛行機代を払わない」「空港でお金を使ったことがない」といった声を聞く。やはりそのくらいのポイントがたまるものなのだろうか。
「毎月20万円をそのカードで支払ったならば、ポイントはどのくらいになっているか」を計算した。

 アメックスはカード利用金額100円ごとに1ポイント、ダイナースは2ポイントたまる。
 20万円使用すればアメックスは毎月2000ポイント、ダイナースは4000ポイントだ。
 1年間でアメックスは24000ポイント、ダイナースは48000ポイントとなる。ポイントは航空会社のマイルに換算可能だ。
 それだけのマイルがあれば、どこまで行けるか? ANAのレギュラーシーズンをベースに計算した。

 24000ポイントあれば、エコノミークラスならば中国、香港、マニラあたりまで往復することができる。ビジネスクラスならば、オフシーズンの韓国への往復が可能だ。
 48000ポイントならば、エコノミークラスでハワイに往復できる。安い時期ならばアメリカ本土や、ヨーロッパも可能だ。ビジネスクラスなら中国、香港、マニラに行って帰ってくることができる。

 ポイントに関しては圧倒的にダイナース。さらに、ダイナースはポイントの有効期限が無期限だが、アメックスは3年間の有効期限があり、無期限にするためにはメンバーシップ・リワード・プラスに支払いをして登録する必要があるなど、細かいマイナス点がある。

 さらに、2017年4月1日からはANA以外の17の海外提携航空パートナーのマイル移行のレートが、1000ポイント=1000マイルから、1250ポイント=1000マイルに変わる。
 レートが悪くなるということだ。

2.ブランド力
→アメックスの完勝

「アメックス持っているんですか、すごいですね!」と言われることはあるとしても「ダイナースのプレミアムですか、すごい!」と言われることはまずない。
 ダイナースもかつてはアメックスに匹敵するブランド力を持ちあわせていたが、三井住友トラストクラブの傘下に入ってからというもの、著しくその価値を下げている。
 ユーザーから寄せられた不満は、そこに集中していた。

 両カードともに、会員向けの雑誌を発行している。ダイナースの会員向け雑誌「SIGNATURE(シグネチャー)」の評判が悪い。
 三井住友信託銀行グループに入ってからというもの、その雑誌には頼んでもいない広告がたくさん載るようになり、「プレミアム感がゼロ」とのことだ。

 カードそのものにも、いろいろなところに「三井住友」の文字が入ったり、三井住友グループのロゴが入ったりする。これが猛烈にダサいという。
 さらに、今ではカードの引き落としの際に通帳に記入されるのが「ミツイスミトモトラストクラブ」の文字だ。これが恐ろしく恰好悪い。
「かつてシティバンクの富裕層向けサービスから始まったダイナースの、いいところはまったく残っていない。今のダイナースは、ことごとくポイントを外している」
 とユーザーは手厳しい。

 ダイナースは昨今「一定額以上の利用で年会費無料」というキャンペーンを多々行っている。
 元々富裕層向けのカードだったが、よく言えば裾野を広げる、悪く言えばサービスレベルを大きく落としているのだ。

「この度、年会費は高いけれど奮発してダイナースを持つようになりました」
 そう語る、おそらく富裕層ではない女性は、ダイナース保有者が受けられるサービスに「こんなにいろいろしてもらえるなんて!」と感激したという。
 現在のダイナースが、どのような客層をメインにしているかがよくわかるエピソードだ。

3.使い勝手の良さ
→ダイナースの圧勝

 ブランド力では水を開けられたダイナースだが、この分野で大きく挽回した。
「アメックスは、仕事とそれ以外の使い分けができないのが不便」
 多くの経営者がこの不満を口にした。ダイナースは1つのカード口座で、この支払いはビジネス、これは個人というように分けることができる。この部分を評価する人は多かった。
 アメックスは、別途法人用カードを作らなければならない。
「事業内容の異なる複数の会社を経営していたりすると『この支払いはここで、これはこの会社。これは個人の支払い』というように分ける必要のあるケースがよくある。そういうときにダイナースは便利」
 そのため、ビジネスに関する支払いはまずダイナースを出し、そのカードで支払いができない場合はアメックスを出す、という人が多い。

 なお、ダイナースが1枚で済むことで、支払いで発生するポイントを一元化することなどもできる。会社の支払いを個人のポイントにするといったことも可能だ。

 使い勝手という面で、加えて評判が悪かったのが、アメックスのウェブサイトだ。
「外国人向けにつくられている感じが強く、日本人が使い慣れたつくりにまったくなっていない。極めて使いにくい。おそらく、年配の人などはまったく使いこなせないと思う」
 ある経営者は語った。

 ただし、ダイナースも完璧なわけではない。たまたま引き落とし用の口座への振替が間に合わず、カードの引き落としがされないことがある。
 そのときも、アメックスはそれまでの取引履歴等から判断し、引き落としがされなくともカードが使える。
 一方でダイナースは、問答無用でカードの使用がストップする。それまでどれほど多くの額を使用していたとしてもだ。そのあたりは融通が利かない。

4.緊急時の対応の差
→アメックスの完勝

 三井住友信託グループになったこともあり、今後ダイナースの臨機応変できめの細かいサービスはなくなっていき、さらに杓子定規なものになっていくだろう。
 ダイナースもアメックスも、カードの使用金額に決まった上限はないとされている。
 だが、ユーザーの感覚では、ダイナースには明確な限度が決まっているように感じるという。実際に支払いができなかったこともある。

 アメックスはその点が柔軟だ。もちろんだからといって何でも買えるわけではないが、今までの使用履歴等を見ながら、柔軟な対応をしてもらえる。これは日本のクレジットカードにはなかなかない感覚だという。

 両方のユーザーからすると、ダイナースの対応はぬるくて面白みがないと感じるレベルに、アメックスの対応は臨機応変で迅速だ。
 カードを第三者に使われていたことが発覚した際の対応は、アメックスがダイナースよりもはるかに速い。

 ほかにもカードをなくした、壊れたといったときも、速やかに新たなカードを発行してもらえる。
 その際も「書留で送ると、ご本人しか受け取れないですから時間がかかってしまうかもしれません」と、メール便で送ってもらえるという。それならば会社に送ってもらえれば、本人不在でも誰かが受け取ることができる。

 メール便で送ることのリスク(履歴が残らない、受け取りの証明が追えない等)は、対応できるようになっているのだろう。

5.使える店、優待を受けられる店の数やその種類
→引き分け、ドングリの背比べ

 昔はダイナースが使えない店、アメックスの使えない店もあったが、現在日本国内において、クレジットカードは使用できるがこの2つが使用できないという店はまず存在しない。
 どちらも問題なく使える。

 ただし、アジアにおいてはそうとも限らない。その理由はダイナースの手数料の高さだ。本当に対応が間に合っていないこともあるが、それよりも手数料で儲けが減ることを嫌い、本当は使えたとしても「このカードは使えません」と言う店がある。
 ある企業経営者のアジア出張に同行した際、支払いをダイナースで行おうとするも使えないと言われ、アメックスに切り替えるケースが見られた。

○小さな優待など使わない、コンシュルジュは使えない
 アメックス、ダイナースともに、多くのレストランで優待を受けられたり、ホテルや旅行会社で割引があったりといったサービスを提供している。
 メリットのように感じられるが、両方のカードを所有している人によれば「ドリンク1杯サービスとか、10%割引とか、そんな小さな優待のために店を選んだり、事前にカードを提示したりなんて面倒なことはしない」という。

 実はあまり役に立たないサービスだという。
 同様に、ユーザーの評判がすこぶるよくなかったのが、両カードが提供している「コンシュルジュサービス」だ。
「電話1本かければ何でもやってくれる」と噂だが、サービスに対するもっとも多い不満が「そもそも何をやってくれるのかよくわからない」だ。

 たとえばすでに満室のホテルでも、コンシュルジュ経由ならば、それぞれのカード会社が押さえている枠を使わせてもらえたりするのかというと、それはない。
「『旅行のルートを考えてチケットとホテルを押さえて』と頼むと、とんでもなく高いプランを持ってくる。『このツアーで、一番安い組み合わせを整えて』と頼んでも、誰でも使える旅行サイトで申し込むのと同じような金額にしかならない」
 複数のユーザーに取材したが、コンシュルジュがいい、よく使っているという人には出会わなかった。

6.提供されるサービス
→引き分け

 その他にこれらのカードの特徴として、海外旅行や出張などの際のサービスがある。空港でラウンジの使用が可能だったり、手荷物を運んでもらえる、現地での買い物でトラブルがあったときの保障、保険が充実などだ。
 便利であることは間違いない、だがこれも、ある経営者は「これらのカードのユーザーになるような人は、すでにラウンジに入れるようなステータスを持っている。カードを提示して入ったことはない」と言う。
「24時間日本語対応のトラベルデスクもあるが、使ったことがない。現地のクライアントが用意したり、対応してくれる」
 そう語り、さらには「経営者はすでにいろいろな保険に入っている。もし現地で何かあっても、カード会社の保険などには頼らない」と言い切った。

 アメックスに比べ、ダイナースが多く行っているサービスとして、様々な実際に会うイベントの開催がある。
 趣味のものから、ビジネスに関するものまで、その幅は広い。
 だがこれも「魅力がない。行かない」とユーザーは一刀両断だ。

 両方のユーザーの生の声をいくつか聞いて、出た結論は

○2勝2敗2分け

 だ。なお、引き分けたところはあってもなくてもどうでもいい部分だが、負けたところは両カードとも大きなマイナス点、という評価となった。
 双方のメリット、デメリットを見ながら、有効なカードを使うようにしたい。

※2017年8月28日 更新

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