2016年11月22日に開館する「すみだ北斎美術館」墨田区の両国は江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の家があったことから、区にゆかりの人物として、墨田区は多くの北斎作品を所蔵している。
葛飾北斎は1998年にアメリカの「ライフ」誌が企画した「この1000年間に偉大なで最も重要な功績を残した世界の人物100人」に日本人として唯一選ばれている(86位)。
北斎の作品が、洋画家のポール・ゴーギャンをはじめ、多くの印象画家たちに強い影響を与えたとされ、ヨーロッパの絵の世界にも大きな印象を残したのだ。
ちなみに85位にランク入りしたのはヘレン・ケラーで、ウォルト・ディズニー(90位)、トルストイ(93位)らよりも北斎の順位は上だ。
「幻の作品」を復活、初公開も
葛飾北斎というと、富士山の浮世絵「富嶽三十六景」の印象が強い人が多いが、それ以外にも肉筆画など多数の絵を残している。
北斎は絵そのものだけでなくその生きざまも多くの画家に影響を与え、多くの画家が、葛飾北斎を描いた絵を残している。すみだ北斎美術館は、その人物像にも深く迫る。
焼失した北斎晩年の傑作とされる大絵馬「須佐之男命厄神退治之図 (すさのおのみこと やくじん たいじのず)」もこの度推定復元された。
北斎が86歳のときに描いた肉筆画だが、関東大震災で焼失し、現存するのはモノクロ写真1枚のみとなっていた。それを復元した絵がこちらだ。
また、海外に流出し、100年以上行方不明だった約7メートルの大作「隅田川両岸景色図巻」もこの度初公開となる。その大きさには圧倒される。
ほかにも、北斎の作業風景を門人が記録した絵から、その様子を模型で再現もした。
この模型が、時々、少しだけ動く。
大きく動くならばそういうものとして見ているが、じっと見ていると微妙に動く。
老人と老婆(一緒に暮らしていた娘)の像が、忘れた頃に少し動く。
かなり不気味である。
建物のつくりには「?」も
建物は妹島和世氏設計の特徴ある建物で、いわゆる「古臭い美術館」の感じがない。壁も床もすべて黒い展示室は、足下に特徴的な照明が取りつけられたりしている。
光の使い方が、非常に特徴的だ。
浮世絵は絵の具に植物顔料を使用していることが多く、光に当てると退色してしまう。そのため作品保護のうえで、展示会場を薄暗くせざるを得ない。
この美術館は、それを逆手に取った。
そもそもを暗くしながらも、ところどころを明るくすることで、目立たせるものをよりはっきりさせているのだ。
面白いもので「普段の美術館の展示会スペースに比べると暗い」のはマイナスなイメージだが、「元々暗いもの」として入ると、照明の存在がむしろしっかり明るい印象を与える。
建物は決して大きくない。入口がどこかも非常にわかりづらい。ミュージアムショップは小さく、最近のミュージアムの評価ポイントの1つであるカフェもない。
公園に隣接しているが、近くにはスーパーマーケットがあるだけで、今のところ周辺施設はそこまで充実していない。
トイレにはドライヤーがないなど、建物の機能にはいくつか不満もある。エレベーターは2つあるが、あまり人が押し寄せるとどこに並ぶのか、ゆったり作品を鑑賞できるのかという印象を受けた。
ワークショップやイベントなどを多々行っていくということで、そのための講座室は大きくつくられているが、展示室そのものが、あまり多くの人が来ることを見越していないように感じられた。
ここ最近は伊藤若冲、鳥獣戯画の展示に長蛇の列ができるなど、日本の絵を年配者だけでなく若い人も見るようになってきた。
本日の内覧会でも多くの人が足を運び、非常に熱気があった。
果たしてこの建物のキャパシティで対応できるのかやや心配になるが、そのあたりの改善については、オープンしてから様子を見ながら、ということになるだろう。