退職金に対しては、どのような税金がかかるのか?
ここで、大前提を共有しておきたい。
「退職金は、たいへん税金が優遇されている所得である」ということだ。
具体的に言うと、ほかの所得に比べても、退職金は控除額が非常に大きい。
退職金にだけ、そのように税金が優遇されているのはなぜか? そもそも退職金がなぜ支払われるのかで考えるとわかりやすい。
サラリーマンしかしてこなかった人が定年で勤めていた会社を退職したならば、年金等を除いて今後の収入はゼロになってしまう。それでは生活が困窮するので、これまでと同様の生活を保障するために退職金は支払われる。その意味でも税金の率は低い。
また、日本は累進課税のため、所得の額が増えれば増えるほど、課される税金の率は上がる。
退職金が、数十年レベルの勤務に対して支払われた場合、その金額は1000万円を超える。仮に退職金がほかの所得と同様に計算されるならば、1000万円超には33%の高い税率が課せられてしまう。
退職金を受け取った瞬間に高い税率が課されるのでは、それならばまとめてではなく数十年間で少しずつ受け取っていったほうが税率は下がる。それでは本末転倒と言える。
そのような理由から、退職金はほかの所得と異なる部分が多々あり、大きな額の控除がある。
退職所得はこう計算する
退職所得控除額の具体的な計算方法は以下だ。
具体例で計算しよう。勤続年数が12年3カ月の人の場合、端数は1日でも1年に切り上げるため、退職所得控除額は勤続年数は13年として計算する。
退職所得控除額は40万円×(勤続年数)=40万円×13年=520万円
となる。
勤続年数が30年の人の場合、退職所得控除額は
800万円+70万円×(勤続年数-20年)=800万円+70万円×10年=1500万円となる。
東京都の発表しているモデル退職金が1200万~1300万円なので、一般的な人にとって、退職金は充分に控除の範囲内になるレベルだと言えるだろう。
大企業勤務者や中小企業でも役員を務めたなどした場合、実際の退職金が退職所得控除額を超えることも多いだろう。その場合は実際に支給された退職金額から退職控除額を引き、残った額に応じて税率をかけ、住民税を計算することになる。
退職金の税金は確定申告で戻ってくる場合も
なお、退職により勤務先から受ける退職手当などの所得を退職所得というが、その範囲は広い。いわゆる「退職金」といわれるものほかに、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされる。
また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や、賃金の支払の確保のために解雇された場合などは、のちほど支払われる未払い賃金も退職所得に該当する。
退職所得の税金は、通常は確定申告は不要だ。退職金を受け取るとき、会社から「退職所得の需給に関する申告書」を渡され、記入し事前に提出することで、退職金の税金があらかじめ源泉徴収されるからだ。
その届けを会社に提出していなければ、一律で20.42%(復興特別所得税を含む)の税率で源泉徴収されるため、確定申告をすると税金が精算される。
定年退職ではなく、退職して独立した、退職後は再就職しなかった(もしくは年をまたいで再就職した)ことで年末調整を受けていない人は、確定申告をすることで税金が返ってくる可能性がある。
その際に絶対必要になるのが、源泉徴収票だ。確定申告には、源泉徴収票が欠かせない。勤めていた会社から受け取るようにしたい。
再就職していても、前職時代の所得に関して年末調整がされていないことがあるので、確定申告の時期に税務署で確認しておいたほうがよい。
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