日々過熱しているビットコインを初めとした仮想通貨市場。中国政府によるICO(イニシャル・コイン・オファリング:新たな仮想通貨の発行)を禁止する通達などを受けての上下はあるが、大きな流れで見るとビットコインの価格は上昇を続けている。
ここ最近はネガティブな報道が目立ってきたが、損した人は騒ぐが儲けている人は何も言わない、人が知ったら自分が儲からなくなるので絶対に口外しないのは投資の世界の常で、昨今のブーム以前からビットコインを所有する人は、今売れば確実に儲けられるわけであり、ネガティブな報道が多い=裏で儲けている人が多いことの証明とも言える。
そのような流れにある仮想通貨だが、ある意味で中国の動きよりも気になる発表があった。国税庁がビットコインをはじめとする仮想通貨の取引で生じる利益が「雑所得」にあたるとの見解をまとめたのだ。
これまで、仮想通貨を所得税法上どう分類するかは明確でなかった。国税庁は今年以降の対応として①ビットコインを使用することで生じた利益は所得税の課税対象となる ②所得区分は原則として雑所得にあたるという見解を示した。仮想通貨に対する税制上の言及としては初めてのものだ。
「雑所得」と言われて眉をひそめる人も多いだろう。雑所得は、投資で得られる所得の分類として、あまりにメリットがないからだ。
「個人投資家にとって最悪」とまで言う人もいる雑所得のデメリットを一言で表すと「課税所得を押し上げるがほかの投資の損を吸収できず、翌年以降へのメリットが一切ない」ことだ。
雑所得でも、外国為替証拠金取引(FX)や金先物については税金が多少優遇されていて、一律20.315%(地方税含む)の税率が適用される。譲渡所得の税率も同じなので「投資に対してかかる税率20%」の範囲だ。
しかし、仮想通貨の利益は給与所得などとあわせて計算され、所得に応じて5~45%の累進税率がかかる。
「損をしても税金を払う」リスク
さらに問題なのは、株などの「譲渡所得」には存在する優遇策がないことだ。「貯蓄から投資へ」の動きを加速させたい政府は、投資に関して様々な優遇策を設けている。投資で損失を生んでもそれをある程度カバーできるよう、公社債や上場株式の譲渡損益はお互いに差し引きして課税対象の所得を減らせる仕組みがある。それが「損益通算」だ。
簡単に説明すると、ある株では100万円儲けても別の株で100万円損をした場合、損益はゼロとなる。
また、損失を3年間繰り越すことが認められていて、将来の利益と相殺することもできる。簡単な例でたとえると、2015年に株で1000万円損し、2016年、2017年は500万円ずつ株で儲けたようなケースでは、2015年の損を超えていないとして課税の対象となる所得は発生しない。
仮想通貨はそうはいかない。
雑所得は基本的に1年単位となり、将来の利益との相殺ができないので、2015年に仮想通貨で1000万円損して2016年、2017年で500万円ずつ儲けたなら、その500万円ずつにそれぞれ課税される。さらに税率はほかの所得と合算後にはじき出されるので、高い。
「貯蓄から投資へ」を掲げる政府だが、仮想通貨に対してはあまりよく思っていないであろうことが、その税務上の扱いから明確になった。激しい値動きに着目した投機的な取引が増えていることにも目を光らせているほか、仮想通貨は発行元になる国家や中央銀行が存在せず、政府のコントロール下にない。
急速な市場拡大に伴い、仮想通貨で巨額の利益を手にした個人投資家も多い一方で取扱環境が整いきっていない。それをよいことに課税逃れも多いと予想され、それを防ぐ目的もあると考えられる。