オンリーワンの慶應の付属校
富裕層の子どもが通う学校として、慶應ニューヨーク学院がその存在感を増してきている。
元々は海外に駐在する日本人の子どものための学校で、現在は日本からの出願も受け付けている。昨今、英語教育の重要性が増していることから、子供の将来を見据えて、海外在住でなくとも、ニューヨーク学院に通わせる親も増えている。
卒業生の多くが「あれほど楽しかった3年間はない」と口にする、ニューヨーク学院の魅力を追った。
国は違っても、海外暮らしの経験は子どもに似たような価値観を与えるもので、子供たちはウマの合う友人を作り、寮生活で密度の濃い日々を送る。
ニューヨーク学院の全校生徒数は、350人前後。男女共学で、授業の50~70%が英語で行われる。一方で日本語の授業もしっかり行われるほか、英語力がそこまで高くない生徒に対しては個別の授業が行われたり、物理は英語で学んでも化学は日本語でというように、レベルに応じて細かいフォローがなされる。
「小さな頃から海外で暮らし、現地の学校に通っていたから、日本語を使う機会がほとんどなかった。ニューヨーク学院で日本語の授業を受けていたから、日本語を忘れなかったのは大きかった」
ある帰国子女の卒業生の言葉だ。英語が苦手な生徒は英語をフォローし、日本語を使う機会の少ない生徒には日本語のフォローがされる。
ニューヨーク学院の校舎は自然が豊かな場所に位置し、のびのびとした自由な校風の中、安全が確保された環境で寮生活を送ることができる。
多くのことは学生の自主性に任せられており、言い換えれば自分のことはすべて自分で行わなければならない。食事は出てくるが、洗濯などはすべて自分だ。出かけるにもアメリカで切符を買う、タクシーに乗るなどを行っていくことは、子供の生きる力を育む。
日本人のための学校だが、半分はアメリカの学校でもあるため、学校対抗の行事などはすべてアメリカの学校と行う。アメリカの学校の部活動は、シーズンごとに異なるスポーツをする形だ。
文化祭などの行事もたくさんあり、生徒たちは密な人間関係を育んでいく。卒業後も強いつながりを持つ生徒が多いほか、同級生で結婚した例もある。
卒業後の進路は? 学費は?
寮は夏と冬の休み期間中は閉まるため、ほとんどの生徒が親元に帰る。実はニューヨーク学院に通学している間に親が駐在期間を終えて日本に帰国していることはよくあるという。現地の学校に通っていると、子供だけ残してということになりかねないが、全寮制なので卒業までしっかり子どもの面倒を見てもらえる。その部分は教育環境としても大きい。
ニューヨーク学院の卒業後は、慶應大学への推薦入学が可能だ。成績上位者から希望する学部に入学を決めていく。海外生活の長い学生に人気なのは自由度の高いSFC(湘南藤沢キャンパス)の学部だ。
なぜSFCが人気か? SFCは帰国子女がたくさんいるほか、在学中から起業していたりと、日本社会の枠にはまらない学生が多く通うため、ニューヨーク学院の卒業生とも相性がよいのだという。
なお、ニューヨーク学院を卒業後に海外の大学に進学する生徒もいるが、それはごく少数で、ほぼすべてが慶應大学に進学する。卒業生曰く、「ニューヨーク学院は日本語の授業も多い分、海外の大学に進みたかったらかなりの英語力が求められるので、現地の高校なりに行ったほうがよいかもしれない」
型にはまらない卒業生は、大学卒業後も公務員といった職に就く人はまずいない。テレビ局のアナウンサーやディレクター、大手新聞記者、ヤンキース田中将大投手の専属通訳、俳優渡辺謙のマネージャー、Appleのプロジェクトリーダー、日本とニューヨーク州の弁護士、経営コンサルティング会社など様々だ。
ニューヨーク学院の学費は決して安くはない。渡航費用等も加えると、年間で600万円くらいはかかる。ただし、ボーディングスクールは年間1000万円以上かかるのが一般的なのに比べると、だいぶ安いといえる。
合格に大切なのは英語力
なお、ニューヨーク学院は創立当初、現地の駐在員の子供たちを中心とした帰国子女のための学校であったが、不景気等もあり駐在員の数自体が減少したことで、定員割れを起こしたニューヨーク学院は、日本からの出願も受け付けるようになった。
ニューヨーク学院に入学して初めて海外で暮らす生徒も入ってくるようになったことになり、こうした試験制度の変化による合格ラインの上下はあったものの、昨今はかつての帰国子女が中心の学校に戻したい学長の意向もあり、世界中の駐在員に営業をかけているほか、日本からの出願に関しても、合格レベルを高くしているため、一定の学力、特に英語力がなければ入学はできないと言われている。
ニューヨーク学院にはどうすれば入れるのか、日本で初めて同校の受験対策を導入し、この13年間で330名以上の合格者を輩出してきた実績がある英語塾キャタル塾長・林 洋介氏に話を聞いた。
「英語熱の高まりもあり、2017年は過去最高の出願者数で、認知度も倍率も上がってきています。また、海外からの受験者も増えてきており、過去より受験者の質も高まっています。全体的に受験の難易度は上がっていると言えますが、合格するうえで、一番重要なのは『日英の論文力』です。その中でも日本から受ける生徒にとっては、入学後の授業についていくためにも受験の段階で英検2級程度の実力が望ましく、早くから対策を始める必要があります」
「論文力」とは何か? 実際に論文力を鍛えてニューヨーク学院に合格した生徒たちへの取材を通じてわかった、ニューヨーク学院ならではの受験対策法をまとめた「慶應ニューヨーク学院 こう対策すれば受かる」はこちら。