幼児教育には音楽がいい――これは専門家も言っていることだ。
ゆかしメディアでは富裕層限定の会員組織「ゆかし」の会員へのヒアリングなどで、富裕層の動向を調査している。
富裕層の関心が高いこととして、教育がある。どのような教育を受けさせるかはもちろんのこと、就学前の教育にも力を入れている富裕層が多い。
「右脳」と「左脳」はそれぞれ得意とする分野が異なるが、加藤博士によると、いずれか一方だけを鍛えても考え方に応用力が欠如し、偏った思考になりがちだという。
バランスよく脳を鍛えるために加藤博士が重要と考えるのは「聴覚」だ。聞く力が発達している子どもは脳が順調に成長する傾向があるといい、その理由として「聞く力を支える役割を担う脳は左右にあり、注意してしっかり聞く『聴く』という行為が物事を理解する脳を育て、自ずと右脳と左脳の両方の成長につながっていく」からであるとする。
子どもが「一生懸命にやる」ことが大事
ただし、ただ音楽を聴いているだけでは効果は高くない。加藤博士曰く「音楽を“楽しく”聴くことによって、子供は音を脳でイメージしたり、理解しようとしたりします。この音楽を聴く際の脳の働きが、左右の脳をバランスよく育てます。脳の発育によい『聞く』のためには、子どもが聴きたい音楽を聴かせることが効果的です」
加藤博士は子どもの脳の発育のために「もしお子様に習い事をさせるなら、『音楽教室』がおすすめです」と言う。
「子ども自身が『やりたい』と思える、やっていて生き生きするとは、脳が活発に働いているということです。人は、やりたいことであれば、頑張れる。
脳を成長させる一番の方法は『全力で取り組む』ことです。全力を出すとは、脳の働きを最大限まで高めるということ。脳を最大限に使う経験をすることで、他のことでも脳をきちんと使えるようになるわけです。
だから、子ども自身が『本気になれる』『全力を出せる』といいですね。また、子どもをその気にさせるには、『全力で教えてくれる先生』を選ぶことも大切です」
加えて、加藤博士は脳の成長には、「集団で他人と触れ合うこと」も大切だと語る。
音楽の基礎、脳発達の基礎
そのような環境を実現する音楽教室がある。1990年創業、都内で3つの教室を展開する小林音楽教室が大切にしているのが「生徒に楽しいと感じてもらうこと」だ。
楽器を触ったことのない子どもにも楽しいと思ってもらう方法として、音楽を学ぶ以前の「音に合わせて体を動かすゲーム」のようなカリキュラムを同教室は用意している。
それにより、遊び感覚で面白くなり、音楽が楽しいと感じ、音楽を好きになる。
実際に行われている内容は、生徒の年齢に応じて、講師のピアノ演奏に合わせて手をたたいたり、体を動かす、止まるなどするもので、小さい子、幼児でもできるものだ。人数は多くて10人程度、脳の発達に効果的な「他人と触れ合う」ことができ、また講師が1人ひとりに目を配れるレベルの数だ。
「音楽教室だからまず楽器に触れるのが子どもは楽しいと思うのでは?」と考える人が多いが、いきなり楽器を演奏するのは、実は子どもにはハードルが高いことも多い。
基礎的なことができていない状態で楽器に触れても、当然うまく弾くことはできない。そこで壁を感じ、楽しくないとやめてしまう子が多いからだ。
それよりもまずは音楽に親しむ、文字通り「音を楽しむ」ことを最初のステップにしている。
四分音符、八分音符など、子どもにはわかりにくい音の長さを動物の泣き声で区別するなど、子供にもわかりやすい形で説明する。「わかる」が「楽しい」につながる。
このようなレッスンは「ソルフェージュ」といい、いわば音楽の基礎。楽譜の読み書きやリズムの学習などを通して音楽を理解し、表現するための基礎的な訓練だ。もっと簡単に言えば、楽譜を見て頭で考えるのではなく、自然と体が動くようにするためのものだ。
楽譜というのは音符が紙の上に並んでいるので、その通りに演奏すれば、誰もが同じように曲を演奏することができるように思えるが、そう単純なものではない。「楽譜を読む」とは、その裏に潜む曲の感性的なもの、情緒的なものを読み取り、楽器で表現することだ。
よい演奏に必要なのは、「頭で理解する」のではなく「体で理解する」楽譜を「読んで理解する」のではなく「楽譜を見て自然に体が動く」ことだ。
そしてその能力は、幼児期にレッスンをしない限り身につかない。このようなレッスンを週に1回、1~2年ほど受けていると効果が出てくるという。
「音楽のネイティブ」になる
厳密には異なるが、ソルフェージュを英語の学習にたとえるとわかりやすい。日本人が英語を学ぶ際、ほとんどの人は日本語で考えたものを英語に置き換えて話したり、英語を日本語に置き換えて理解している。
日本人でも、英語圏で生まれ英語に囲まれて育った子供はどうなるだろうか。考えるのも理解するのも英語で、日本語に置き換えない。それが「ネイティブ」の状態だ。
ソルフェージュは、ハイレベルな演奏に必須なものとなっている。演奏のプロを養成する音楽大学の試験では、ソルフェージュが一定レベルに達しなければ決して合格できないところがほとんどだ。
先ほど加藤博士は「楽しむこと」「全力で取り組むこと」が脳の発達に不可欠と語った。
1990年、ソルフェージュについて一流の専門家に学んだ小林洋子氏が開校した小林音楽教室は、多数の生徒のソルフェージュ教育を実践してきた経験に基づき独自の方法を開発、ソルフェージュ・システム・メソッド®として提供している。
このメソッドをしっかり行った生徒は、音楽に限らず学業の成績もよくなる傾向がある。
生徒たちを見ている保護者から寄せられる感想は「ほかの生徒と比べて集中力が違う」「達成しようという力が強い。そう簡単に投げ出したり、あきらめたりしない」という。
音楽が楽しい→続く→投げ出さない、やり遂げる、ほかのことでもそうなるというように生徒は成長していくのだ。
小林音楽教室はプロの音楽家以外を多数輩出する以外にも、音楽の道に進まなかった生徒も有名校進学などしている子どもが多々いる。
小林音楽教室のソルフェージュ・システム・メソッド®は、「生きた音楽を奏でられること」に主眼を置いたものだ。音楽学校に合格するためだけのソルフェージュではなく、音楽をより深いレベルで身につけるための方法を教えている。
そして、ソルフェージュのなかでも演奏に役立たないものは大胆にカットしている。本当に必要なものだけを、効率よくしっかり身につけることができるのだ。
一流音楽家を一流の指導者に
最後に、加藤医師は「全力で教えてくれる先生が大事」と説いた。小林音楽教室は、先生の質にもこだわっている。
まず講師は一流のプロフェッショナルの音楽家に限定。先生の演奏会も定期的に行われるため、それらの会を通じて先生の演奏を聴き、学ぶことも生徒のモチベーションを上げる。同様に一流の音楽家が演奏するホールで生徒が発表する機会や、それを見越した演奏勉強会もあり、それも「楽しい」「続く」に役立っている。
「1回の本格的なステージでの演奏は、普段の練習の100回分くらいの価値(ちから)がある」
発表会を経験し、子どもの「音楽をやりたい!」という気持ちが目覚めたという保護者の言葉だ。
定期演奏会(発表会)も会場はサントリーホール、銀座ヤマハホールなど、本格的だ。音響のよい会場は子どもが気持ちよく演奏できると、モチベーションを高める。
4000名以上の子どもの教育に携わり、卒業生の多くがハーバード大学、イェール大学、ブラウン大学、ペンシルバニア大学ウォートン・スクールなど世界各国の最難関大学へ進学し、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者、船津徹氏は「習い事は“10年以上”続けることが大切」と語る。
約30年の歴史のある小林音楽教室は、10年以上教室に通う生徒を多々輩出してきた。
音楽教室で習う楽器はピアノが多いが、小林音楽教室は総合音楽教室なのでピアノ以外にヴァイオリン、チェロ、フルート、クラシックギターなどのほか、声楽やボイストレーニング、作曲などのクラスもある。
自分が本当にやりたい楽器、音楽へと変えていく生徒もいる。
生徒や保護者からは、以下のような感想が寄せられている。
「先生が子どもの気持ちに寄り添って指導してくれる、やる気を引き出してくれる」
「自分にはとてもこの曲は弾けない、人前で演奏会なんて絶対無理と言っていた子が、先生の演奏会を見たり、その演奏会の場所で自分が発表する経験を経たりして自信がつき「みんなに演奏を聴いてもらうのが楽しい」と言うようになり、難しい演奏にもチャレンジするようになった」
「まだ4歳、そんなに細かなことまで指導されても、難しいことはまだ無理」と時々思ったが、親の心配をよそに子供はどんどん吸収していった。子どもの可能性は無限大。親が躊躇してはいけないのだ、と後から反省した」
教室は3つあり、新宿教室は県をまたいで遠方から通う生徒が多く、麻布教室、船堀教室は地元の生徒が中心だ。
子どもを「通わせる」のではなく「子どもが自ら習いたい」と思う教室、それが小林音楽教室だ。