借金の返済負担が大きく、経済的な余裕をもてないときは「任意整理」が有効かもしれません。
比較的簡単な手続きで返済額の軽減が期待できます。
この記事では、そんな任意整理についてわかりやすく解説していきます。
メリットだけでなく、覚えておく必要があるデメリットもわかるので、借金のせいで毎月の返済がきつく、そのために家計を圧迫してしまっている人などは、ぜひご覧になってください。
任意整理ってそもそも何?
「任意整理」とは、債務者(お金を借りている側)と債権者(貸している側)が、利息の軽減などを目的に交渉することです。
任意整理を理解するポイントは3つです。
- 借金を減らす方法
- 債務整理という方法の中の1つ
- 利息をなくして返済額を減らせる手続き
現在の返済より負担を軽減させるために、貸金業者やクレジットカード会社と、利息のカットや分割回数(3年〜5年程度)について交渉。
そして和解交渉が成立後、その計画をもとに返済を開始します。
うまく和解できると、利息額をカットできて毎月の返済額を減らすことができるのです。
債務整理の方法には、自己破産・任意整理・個人再生があり、最も選ぶ人が多いのが「任意整理」です。
自己破産・個人再生と同じ債務整理の一種ですが、裁判所を通さないため、生活への影響がもっとも少ない手続きといえるでしょう。
ただし、 任意整理で和解するためには「このままでは借金返済できない」ことを債権者に理解してもらい、お互いが譲歩しながら、今後の返済方法をまとめていかなければなりません。
したがって、譲歩の内容によっては「将来利息」や「遅延損害金」が免除されない場合もあります。
また任意整理は、これまでの取引を利息制限法の上限金利(15.0〜20.0%)で再計算(引き直し計算)します。
多くの場合、将来利息の減額・カットとなりますが、もし過払い金があれば元金部分も減額できるかもしれません。
任意整理は元金が減らせないと思いこんでいる人も多いですが、場合によれば元金部分の減額、または借金がゼロになり、過払い金を請求できるケースもあります。
もし過払い金が返ってくれば、今後の生活が少しでも潤うことになるので、借金返済に悩んでいる人は、一度相談してみることをおすすめします。
任意整理ができる人ってどんな人?任意整理ができる条件は?
先述で説明したとおり、任意整理は利息をカットでき、返済負担を軽減できるかもしれませんが、すべての人が利用できるものではありません。
ここでは任意整理ができる人の条件を解説していきます。
安定した収入があること
任意整理で借金の返済負担が軽くなっても、返済自体は数年間継続しなければなりません。
そのため、無収入や生活保護の人は任意整理を利用できない場合が多いでしょう。
しかし、任意整理の対象は会社員や公務員だけではありません。
アルバイトやパートでも、安定した収入がある場合は、任意整理は可能です。
ただし、アルバイトやパートの場合は、収入の増減に注意が必要です。
アルバイトやパートの場合、シフトの内容によって収入が減る月もあるでしょう。
減った月は貯金から出したり、収入が多かった月の余剰金を充てるなど、返済計画に影響が出ない対策を準備しておきましょう。
もし2回以上返済ができなかった場合、残りの借金を全額一括で返済しなければならないのが一般的です(これを、「懈怠約款」と呼びます)。
今後3~5年後の間に完済を目指せること
任意整理による返済期間は交渉次第で、ある程度自由に決めることができますが、一般的には3年〜5年で完済できる返済計画でなければ和解に応じてもらうことが難しいといわれています。
そして、任意整理の和解が成立すると、その後は3年〜5年で完済です。
借金の残元金が多いということであれば、それにともなって「収入」や「資産」も多くなければ任意整理を利用することは難しくなります。
なぜなら、任意整理を利用することができたとしても、長期間にわたって分割返済を継続する必要があるからです。
返済を継続できると認めてもらうためには、ある程度の収入が見込めて、資産も保有していることを債権者に認知してもらうことが必須といえます。
今後も必ず返済する意志があること
任意整理は和解が成立したら終わりではありません。
先述で説明したとおり、今後は3〜5年の期間で返済していくことになるでしょう。
利息カットに応じてくれた債権者(借り手)にしっかりと返済する意志があることを、真摯な態度で示す必要があります。
もし、任意整理の返済を滞納した場合は、債権者側(借入先)から一括返済を請求され、結局は自己破産や個人再生を選択しなければならなくなります。
そうならないためにも固い意志をもっていなければ、返済を続けていくことはできません。
任意整理のメリットは?
任意整理のメリットをここでは確認していきます。
- 毎月の返済額を軽減できる
- 整理したくない債権者は除外して和解交渉できる
- 過払い金が発生していれば元金も減らせる
毎月の返済額を軽減できる
任意整理は、利息の軽減が期待できます。そして和解交渉がうまくいき、利息のカットができれば、月々の返済負担が軽減されます。
仮に、毎月30万円の給料収入があって、そのうち返済に15万円充てていた人が任意整理後に数万円の返済負担を軽減できれば、今後はプライベートや貯蓄などにも資金を回すことが可能です。
無茶な浪費は控えること、ライフスタイルの改善を図ること、これらを意識していくことで以前よりゆとりをもって返済していくことができます。
整理したくない債権者は除外して和解交渉できる
借金を抱えている人の中には、住宅ローンやマイカーローンを組んでいることもあるでしょう。
任意整理の場合、整理したくない借金を除外して交渉することが可能です。
したがって、住宅ローンや車のローンはそのままして、消費者金融のローンについてのみ任意整理ができます。
任意整理をするからといって、住宅を売却したり、車を手放したりしなければいけない。といった心配はありません。
過払い金が発生していれば元金も減らせる
法定利率(15.0〜20.0%)で計算し直してみると、実は過払い金があったというケースもあります。
「過払い金」という言葉をテレビのCMなどで耳にしたことのある人も多いと思います。
もし過払い金が発生していれば、借金が減額したり、払い過ぎたお金が戻ってくる場合もあります。もし過払い金が戻ってくれば、今後の生活が少しでも楽になりますよね。
「もしかして」と思ったら一度確認してみましょう。
任意整理のデメリットは?
前項で任意整理のメリットを説明しましたが、任意整理には理解しておくべきデメリットもあります。
- ブラックリストに載る可能性がある
- 賃貸契約や住宅ローンなどが組みづらくなる
デメリットの2つをさらに詳しく解説していきます。
ブラックリストに載る可能性がある
任意整理をすると、信用情報機関に記録が保存されます。
これがよく言われる「ブラックリストに載る」ということです。ブラックリストに載ると5年間は新たな借入れが難しくなります。
ブラックリストに載ると、新たにクレジットカードを作ることもできなくなり、現在使用しているクレジットカードも使えなくなる可能性があります。
もし、携帯電話などの支払いを「使えなくなったクレジットカード」で登録している場合は、早めに別のクレジットカードに変更しておくことです。
ブラックリストは最長5年なので、5年経過後の個人信用情報から記録が消えると、クレジットカードの審査にも通りやすくなります。
賃貸契約や住宅ローンなどが組みづらくなる
任意整理をして、ブラックリストに登録されてしまうと、過去に金銭事故を起こしてしまっていると判断されてしまうケースがあります。
そうなると、希望する賃貸住宅を借りられない、住宅ローンを組むことができないなどのリスクを抱えてしまいます。
賃貸住宅への対処法には「家賃保証会社」を利用しない物件を探すことが挙げられます。 家賃保証会社が金融情報の審査を行うので、家賃保証会社を利用しなくても良い物件を選んで賃貸契約を締結しましょう。
住宅ローンに関しては、ブラックリストに載っている間は審査に通る可能性は厳しいでしょう。しかし、ペアローンを組んだり、頭金を多めに入れたりすればローンの審査に通る可能性は上がります。
任意整理はしない方がいいって本当!?そう言われている理由を解説
前項で任意整理のメリット・デメリットを解説しましたが、そもそも「任意整理」はしないほうが良いという意見も多くあります。
では「なぜそう言われているのか?」の理由と、同じ債務整理でも「個人再生」などを検討した方がいいケースも解説します。
任意整理は利息をカットするためのものなので返済額が膨大な場合は向かない
そもそも借金が多い人の場合、利息をカットできたとしても家計に対する返済負担は重いままです。
返済額が減ったところで、返済を継続することが難しいケースが多いといえます。
そのような人は次に説明する「個人再生」などの債務整理を選択したほうが適していると言えるでしょう。
同じ債務整理でも個人再生などを検討する方がいいケースとその理由
借金が多い人の場合は「個人再生」を検討したほうが良い場合があります。なぜなら「個人再生」の場合は借金総額を減額することができるからです。
任意整理では、減額できるのは基本的に「経過利息」や「将来利息」などですが、個人再生では利息だけでなく借金の元本の減額にまで踏み込んで返済計画を立てます。
任意整理は債権者(貸し手側)と和解できなければ利息カットは難しいですが、個人再生では5分の1から最大で10分の1程度にまで減額が可能です。
このように借金が膨らんでしまい、自力ではなかなか返済が不可能な状況まできた場合は、借金の元本部分も減額できる「個人再生」の方が適しています。
次に手続きの方法ですが、個人再生は裁判所を通して行います。
手続きを希望している債務者(借り手側)が裁判所に再生計画を提出し、それが裁判所から認められることで再生が開始されます。
「個人再生」の場合もデメリットがあるのでふれておきます。
- 裁判所を介して手続きするため時間がかかる
- すべての債権者を対象に扱う必要がある
- 裁判所に提出する書類が多くて、手間がかかる
これらのデメリットを踏まえたうえで「個人再生」を選択するか検討してください。
今すぐ任意整理をするべき人の特徴とは?
任意整理はメリットとデメリットがあり、すべての人が任意整理に向いているとは限りません。
任意整理をすべき人の特徴です。
- 安定した収入がある人
- 返済が長期間に及んでいる人
- 家族に内緒で借金問題を解決したい人
安定した収入がある人
もし、ある程度安定した収入がある場合は任意整理に向いているといえます。
任意整理では、和解交渉が成立すれば、利息をカットできて、月々の返済負担を軽減できます。
したがって、安定した収入に対して、返済負担も軽減できるので、過度な消費をしないように生活をすれば、3~5年で借金をすべて返済することができます。
返済が長期間に及んでいる人
借金の返済が長期化している方は元金が減っていない可能性があります。
なぜなら、高い金利で借金していて、毎月の返済の大半を利息に充てているからです。もし任意整理で利息をカットできれば、毎月の返済額を元金部分に充てることが可能になります。
そして、過払い金が発生しているケースもあります。
過払い金が返金されると、元金が減り借金もゼロになる可能性が出てきます。
家族に内緒で借金問題を解決したい人
責任感が強く、借金を家族に内緒のままにしている人もいるでしょう。
そのような人は、借金していることがバレにくい「任意整理」がおすすめです。
任意整理以外の債務整理手続きには「自己破産」や「個人再生」といった裁判所を利用して行う手続きがあります。
裁判所を利用する場合は、本人名義の財産を手放さなければならない場合があったり、裁判所に対して家族全体の細かい収支状況などの書類を提出する必要があるため、家族に借金のことを知られてしまいます。
その点、任意整理は「整理したくない債権」を省くことができ、原則として財産を手放す必要はありません。
裁判所を通さなくてもいい手続きであることから、家族に内緒で行いやすい債務整理手続きだと言えるでしょう。
任意整理の実際の流れは?必要書類や任意整理後に気をつけるべきことも解説
任意整理の実際の流れはどのようになっているのでしょうか。
相談から、完済までを順に解説します。
後半は任意整理後の注意点もありますので、ぜひ参考にしてください。
ここで重要なのは、今の状況で任意整理が適しているのかを判断することにあります。
あとでも触れますが、相談の材料である書類はきちんと準備しておきましょう。
そして、相談先を決定したら委任契約を締結します。
受任通知送付・取引履歴の開示請求は同時に債権者に請求します。
受任通知は債務者に代わって手続きを行うことを知らせるためのものです。
そして取引履歴をもとに、利息は支払いすぎていないか、現在の借り入れについて状況を調査します。
この期間は概ね数週間ですが、長くかかると2ヵ月ほど有する場合もあります。
専門家が取引履歴をもとに利息の引き直し計算を行って正確な借り入れ総額を確認します。
このとき、場合によっては過払い金が発生していることもあります。
過払い金が発生している場合は返金請求を行います。
専門家が和解案を作成し、和解交渉に臨みます。通常は、3年〜5年の分割払い、将来利息のカットなどを交渉します。
ここでの和解案とは計画書のようなものです。
債務者の返済能力を考慮し、利息のカットや返済の期間など、返済計画をまとめます。
※将来利息は残元金に対して支払う利息です。任意整理による和解日以降の利息をさします。
専門家と交渉先の双方が合意すれば契約を締結
和解が成立すると、合意した条件をもとに返済を開始することになります。
この段階で今までストップしていた返済が再開します。
相談から合意までの期間は、目安として3〜6ヵ月程度。
もし和解案をのんでもらえず、交渉が成立しないなどの場合はさらに時間を要します。
手続きに必要な書類
任意整理をする場合、専門家への相談から始まります。
ここでは、必要な書類について確認します。
専門家でも状況を明確に把握できなければ判断のしようがありません。
相談から返済までスムーズに進めるためにも事前の準備はしっかり行いましょう。
- 本人確認書類(運転免許証、保険証、パスポートなど)
- 印鑑(シヤチハタ以外)
- 借入先のクレジットカードやキャッシュカード
借入先の情報、自分に関する情報をまとめておくことでスムーズに手続きができます。
本人確認書類を準備したら、次に準備するものを確認しましょう。
これらは、状況に応じて求められる資料です。
- 債権者一覧表
- 預金通帳
- 収入が把握できる書類
- 住民票
- 不動産登記簿謄本・権利証
- 生命保険証券
- 車検証
債権者一覧表(どこからどのくらい借り入れがあるのかを確認するものです)
預金通帳(過去2年分の預金通帳を用意しましょう)
収入が把握できる書類(直近の給与明細書や課税証明書、源泉徴収票など、収入が把握できる書類です)
収入を確認された際に必要です
住民票(本籍が載っている住民票を用意しましょう)
不動産登記簿謄本・権利証(不動産を所有している場合に必要になることがあります)
生命保険証券(医療保険、生命保険に加入している場合に必要になることがあります)
車検証(車を所有している場合は準備しましょう)
任意整理後の注意点
手続きが無事に終了してからは、いよいよ任意整理による返済がはじまります。
返済の開始後も、原則いままで通りの生活を送ることができますが、以下の注意点を抑えておいてください。
任意整理後の滞納は注意が必要です。
滞納が数日遅れ程度の場合は、ほとんどで一括請求されません。
この場合はなるべく早く債権者(借り手側)に連絡し、速やかに返済してください。
しかし、滞納期間が2ヶ月に及んだ場合は、債権者から一括請求される可能性が高くなります。
そうなると「任意整理」では解決できないと判断されることになるので、今後は「個人再生」か「自己破産」への移行を検討しなければなりません。
任意整理後は、クレジットカードが使えなくなることが予想されます。
その間は、以下のような決済方法で代用できる可能性があります。
- 家族カード(家族が本会員のクレジットカード)
- デビットカード
- プリペイドカード(Suica、PASMO、楽天Edy、nanaco、WAON など)
- QRコード決済(PayPay、LINE Pay、楽天ペイ、d払い、メルペイ、au PAY など)
なお、QRコード決済やプリペイドカードの利用が、クレジットカードと紐づいている場合は利用できないので、事前に変更しておきましょう。
まとめ
今回は債務整理の内の「任意整理」について解説しましたが、まずは債務整理にならないようなライフスタイルを心がけてください。
それでも人生には不測の事態によって借金をせざるを得ないときもあるでしょう。
もし借金返済の負担が大きく、返済できそうにない場合は一度「任意整理」を検討してみましょう。