金儲けを狙わず大富豪になった男

 不動産業界で常に一目置かれるカリスマ経営者だった森稔氏。このたび六本木ヒルズでお別れの会が行われ、故人の生前の功績の大きさを感じさせた。不動産会社を「社会の寄生虫」と戒めながら、金儲けよりも、東京を世界一の都市にすることを目標に、富と名声を築いた。

首相経験者がズラリ


 森喜朗、小泉純一郎、鳩山由紀夫、菅直人の元首相経験者たちがある会合に揃って出席していた。不動産業界でカリスマ的な存在だった森稔氏のお別れの会のため、集まった面々だ。これだけの顔ぶれがそろうことは難しい上に、その他にも政界、財界、芸術界など先生、あるいは大御所と呼ばれる人たちが一堂に会した。死してなおのこと、結果的に森氏の偉大さを示す会となった。

 小泉内閣との距離は近く、都市再生政策のブレーンとしても活躍した。アークヒルズ、表参道ヒルズ、六本木ヒルズに加えて、上海還球金融中心(上海森ビル)などを次々と竣工し、世界でも名声を得るまでになった。米経済誌フォーブスの試算によると、資産19億ドル、世界で683位、日本で16位となっている。

 最近は富を集めても、金儲け優先で他人を幸福にしないばかりに、当局から規制を受けたりする経営者もいないではない。築いただけの富とともに、同じだけの名声を集めることは意外と難しい。ライバルであるはずの同じ業界の中でも、尊敬を集めている。

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