大学は運用でなぜ大損したか

 2007~08年にかけて、金融派生商品(デリバティブ)で巨額の損失を被った大学が数多く現れた。よほど傷跡が大きかったのか、今年に入ってから相次ぐ訴訟。勧めた金融機関に「適合性の原則」の認識が欠けていた、と言われる一方で、また、本業の学問の収益を補う形で投資に走り、存亡の危機にまで陥った学校側の意識も甘かったと言えよう。ここでは、なぜ巨額の損失を出したかを振り返ってみることで個人投資家の教訓としたい。

学生数減、超低金利が背景


 2007~08年にかけて多くの大学が「為替デリバティブ」という名の「魔物」に足を取られた。大きな損失を出した後は、脱出するには多額の証拠金を支払わなければならず、複数の有名大学が苦しんだ。

 今年に入り、駒澤大学、愛知大学が金融機関を相手取って次々と訴訟を起こしている。駒澤大の場合は、為替デリバティブ取引による資産運用に失敗して150億円以上の損失を出し、UBS、BNPパリバ証券、ドイツ証券を相手に約170億円の損害賠償を求めて訴えを起こした。

 関西のある有名私大の職員は「学生数減に加えて、運用でも低金利が長く続いていたので、だんだん債券などに投資をしていくようになっていったのは事実です。ただ、運用方針として株式投資などをすることはできないので、ここまで損するとわかっていれば投資していたでしょうか」と話す。

 各大学を見ていると、その為替デリバティブだが、最初は利益が出ていたのだ。それも月あたり数百万円単位のため、安心していた。しかし、2007年から事態は急変した。

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