ファナックを標的のサード・ポイント、和風アレンジの提案が功を奏すか

 米著名ヘッジファンド運用会社サード・ポイント・マネージメントが、電機機器メーカーのファナックの株式を取得したことを投資家向け書簡で明らかにした。潤沢すぎる資本やIR姿勢への意見も出しており、今後の展開を期待しての買いも入り、12日の東京株式市場では前営業日終値から1290円(6.22%)高の2万2045円の上場来高値を更新した。サード・ポイントは日本では日本流にアレンジしたアプローチを行っており、戦果が期待できそうだ。


ダニエル・ローブ氏(フェイスブックより)
 サードポイントは運用資産総額1兆円を超す著名ヘッジファンド運用会社だが、日本で有名になったのは、2013年にソニーの株式を取得して、映画などエンタ部門のスピンオフを要求するなどの株主提案を行ってからだ。

 創業者ダニエル・ローブ氏が大手PEなどを経て2001年に同社立ち上げ。自身の預金や知人の伝手などで300万ドル(3億円)でスタートしているが、現在の運用資産総額は175億ドル以上と言われる。5800倍以上という驚異的な伸びだ。

 特に、2012年には、ギリシャ国債、ハーバライフ株などで大きな利益を上げたとされ、この年に運用資産が1兆円を超えた模様だ。日本にも関心を示すきっかけとなったのがこの年であり、今や米国を代表するアクティビストとなった雄が、日本株を物色し始めている。

 主な日本株の取得歴は次のとおり。
・ソフトバンク アリババへの投資、スプリント買収などを評価。詳細は不明。

・ソニー 最大7%程度保有していたとされる。映画部門のスピンオフを要求したが、改革の兆しなしと見るや、すべて売却。2割以上の利益。

・IHI エンジンなどの主力事業の可能性と不動産含み益に関心示す。株数などは不明。

 ソニーについては「日本市場の反応を見る意味においても、最も世界的に有名なソニーを狙ったのではないか」(大手証券関係者)との見方もあり、反応を見つつ、戦果が上がるかどうかを測っていたようだ。

 また、米国とは対照的に、トップの退任やM&Aなどの過激な提案は行わないあたりも「日本の国民性を研究してきた印象」(同)とクレバーさも見せている。ソニーでは、2割以上のリターンを上げたと明らかにしており、その後もソフトバンク、IHIと株保有を明らかにした。

 逆に本国の米国ではエグい提案もある。次の示す主なものを見ればそのあたりもわかるだろう。

・マッセイエナジー 株式5.9%を掌握し、委任状争奪戦を展開。放漫経営のCEOを追放し、M&Aを成立させた。

・サザビーズ 株式9.3%保有の筆頭株主に。抵抗を示されポイズンピル条項も認められたが、サードポイントによる株主価値向上が評価され、取締役3人が迎え入れられた。株価は上昇している。

・米ヤフー 一時は11億ドル分保有。CEOの学歴詐称を見抜き、自信を含む3人を取締役に送り込む。CEO交代などを果たし、株式はヤフーが買い取った。

・アクタビス 1億3610万株保有。アラガンを買収することで決着。

 そして、今回のファナックになるが、投資家向け書簡によれば、事業をアップルになぞらえて高評価しており、その上で現在の余剰資金で自社株買いを行うことを要求したり、IR姿勢の改善などを求めている。

 これらは、多くの株主も共通認識を持っていることは予想でき、意外や絶妙な提案かもしれない。

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