【工藤会脱税容疑事件】大組織の上納金60億円、任意団体の課税

 上納金として集めた資金を申告せず脱税したとして、福岡県警は、広域指定暴力団「工藤会」のトップら4人を所得税法違反の疑いで逮捕した。暴力団トップの上納金の脱税で逮捕したのはこれまでで初。認否は明らかにしていないという。

◆大規模組織は上納金は年間60億円
 各紙の報道では、2010~2013年までの4年間で集めた上納金のうち、トップ個人の所得として約2億2700万円が無申告で、所得税約8800万円の納税を免れたとして、所得税法違反の疑いで4人を逮捕しているという。

 地元紙記者は「任意団体の活動資金は把握しにくい、というのが今まで分かりにくい原因だったようです。ただ、今回は自身の親類縁者に金を流すなどペーパーの資料も見つかっていて、私的な所得が明らかに。事件としていけるという感触を得たようです。しかし、これが初の事件化とは、恥ずかしながら、今まで金の流れを把握していなかったわけではないだろうに…」と話す。

 任意団体は読んで字のごとくで、登記する必要はない上に、特に所轄する役所は存在しない。たとえ任意団体であっても、収益事業を行っている団体は税務申告義務がある。法人税法第3条では、法人とみなす旨の規定がある。任意団体とは具体的には、各アマチュアスポーツを所管する団体や、大手マスコミが所属する記者クラブなども当てはまる。収益事業を持たずに、単に、運営費用を各人から徴収して、それを団体の運営に使用する場合は課税対象とはならない。当然ながら、上納金の中に「犯罪収益」が含まれているならば国庫に没収できる。

 しかし、これだけの大きな金額が動いていることは警察白書でも公表されているとおり。これが初の事件化ということは、国税庁、警察庁などの怠慢でもある。

 平成5年の「警察白書」(警察庁発行)によると、「ある大規模暴力団の1カ月の上納金の流れ」が5億2700万円だと紹介されている。広域指定クラスになると毎月数億円単位の金が上納金として納入されていることになる。図では、Aランク幹部は、組員が50人と少なくても、1人あたり150万円を支払い、総額7500万円となっている。

 ちなみに、上納金を「高いと思う」のは33.5%、「当然の額だと思う」が45.4%だった。

 ただし、上納金を納めていないと回答したものは42.5%で、幹部でない組員は51%が妻、もしくは組長らに面倒を見てもらっていると答えており、出ていく資金も多いと見られる。ちなみに、暴力団員の1カ月の収入は101万円以上はわずかに5.9%だが、これらは組長、若頭クラスだと見られる。また、納税意識は低く、所得税の支払いは25.3%、住民税も37.5%にとどまっている。


平成5年警察白書より


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