ライザップで脳出血も、特に高血圧は筋トレには要注意

 高齢者のフィットネス熱がここ数年は高く、利用者の60代以上が3割以上を占めるようになったという(経済産業省調べ)。また、さらにはライザップのTVCMも数多く流れ、一種のダイエットブームが起きているが、「高血圧の人は注意が必要です」と現役ジムトレーナーは警鐘を鳴らす。


 フィットネスジムの懐を支えるのは、今やシニア。経済産業省による産業活動分析によると、一世帯あたりの支出金額のシェアは60代36.5%でトップ。次いで70代21.0%、50代20.3%、40代15.8%、30代5.4%、20代0.9%となっており、50代以上が全支出額の4分の3以上を占める計算となる。また、人数構成比で見ても、60歳以上が最大勢力となっている。

 周囲の影響も受けて運動を始めるのは良いことだが、必ず若年層にはないリスクも伴うという注意は必要だろう。

 昨年8月、高血圧の持病がある東京都内の50代後半の女性が、都内のジムでベンチプレスのトレーニング中にろれつが回らなくなり病院に運ばれ、脳出血による右口角下垂と構音障害と診断され入8日間の入院を要した。

 その後も左右のバランスが取れない、小さい文字が書けない、ろれつが回らないなどの後遺症が残っているという。そのため、女性はジムが安全配慮義務に違反しているなどとして、ライザップの運営会社を相手取って、入院治療費や行為障害による逸失利益など約640万円の損害賠償を請求する訴訟を東京地裁に起こしている。

 同社は著名タレントを起用したTVCMで知られ業績も急成長する企業が運営している。週刊新潮ではその裏側が詳細に報道されているが、背骨が折れたなどという事故例も掲載されており、スポーツにはそれ相応のリスクが伴うことは覚悟が必要だと認識しておかなくてはならない。

 高血圧の生活習慣をただすためには運動は効果があるとされる。ただ、適度な運動を継続的に行うのが効果的であって、一般的に高齢の高血圧の人は、激しいウェートトレーニングなどの無酸素運動するに際しては注意が必要だという。

 元実業団バレーボールでプレー経験もあるトレーナーは「もちろん個人差はありますが、高血圧の人は急激に血圧が上昇するような運動、つまり、自己ベストに近い重量を挙げる無酸素運動では一気に血圧が上昇するので注意が必要です。自分なら有酸素運動を中心にメニューを組むとは思いますが」という。

 また、ライザップでは、いわゆる限界に達してから補助者の助けを得て2、3回挙げる「追い込み」が行われることで、2カ月という短期間で体を作っていく。これは「最も効率的に筋肉を鍛える良い方法で、また、メンタル面で土壇場で踏ん張る力も同時に鍛えられますが、それはあくまでアスリート向け。一般の方にも当てはまるとは必ずしも言い切れません」(同)という。

 前出トレーナーによると、高血圧の人は運動を始める前に医師に相談することを勧めるという。また、ジムに行かなくても、ウォーキングなどを毎日しっかりやることから始めるのも悪くないそうだ。自分に合った運動方法、食事方法、さらには自分に合うジムかどうか、金も時間もあるからと急いでブームに乗るよりも、ゆっくり探すことも大切だ。

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