家賃200万円寄付 AKSが5億円申告漏れ

 AKB48の運営会社「AKS」が東京国税局の税務調査で、2012~14年までの3年間で約5億円の
申告漏れを指摘されていたことが9月1日わかった。1億数千万円の加算税を含め修正申告にはすでに応じたという。「新興の芸能プロが出てくると、必ず狙われる。国税も最初からチャンスをうかがっていただろうし、これも一種の通過儀礼のようなもの」と大手芸能プロの総務担当者。メンバーの家賃、旅行代、前社長の交際費などについて約20項目にもわたるドンブリ勘定が明らかになっている。

 この件は◆朝日新聞◆の報道によって明らかになった。それによると、AKSが立て替えてきたメンバーが家族と暮らす月額100万円~200万円の家賃、旅行代、歯の矯正費、税金など約20項目にわたり、2012~14年の間の総額で約5億円を、立て替え金を報酬として経理処理していたという。国税局はこの立て替えは報酬に
当たらないと判断し、寄付金(課税対象)として修正申告の指導を行ったという。


AKB48
 このお金の流れが少しわかりにくいのは、AKB48グループの組織系統が他の芸能プロとは異なって独特であるためだ。AKSはAKBグループの音楽や映像の権利を保有する大本であり、現在はパチンコメーカーの京楽が経営権を持つ。メンバーは最初はここに籍を置くが、その後の展開によっては別々の芸能プロダクションに所属しながら、AKBとしての活動も行う。その際にはAKBとしての仕事はAKSが担当し、個別の仕事はそれぞれの事務所が担当する。しかし、別の事務所の所属になっても立て替えを続けていたといい、これでは寄付行為と解釈されても仕方がないだろう。

 大手芸能プロの総務担当者は「報道を見た限りだが」と断った上で、「急速に人気が拡大した時期と重なるために、記事中に『経理が追いついていなかった』とありますが、それも事実でしょう。元々、芸能プロダクションは昔からの慣習で一般企業の経理とは違って、ドンブリ勘定が多く、新興の芸能プロが出てくると、必ず狙われます。私も税理士の先生から『芸能界は溜まりが取りやすい先で、おまけに有名なので、最初から狙われていると思った方がいい』とアドバイスされたことがあります。これも一種の通過儀礼のようなものでしょう」と話す。

 不可解な点が多く、例えばタレントの住居費用だが、会社経費での借り上げは芸能界では一般的で、眞鍋かをりさんの事務所の社長が脱税で起訴された際には、眞鍋さんの部屋が家宅捜索されたこともあった。ただ、AKSの場合はメンバーと親が同居するため用の広い部屋代を出したり、旅行代金を負担するなど大盤振る舞いをしている。しかも、全メンバーではないとは言えども、所属事務所を移っても部屋代を支給するなど「よその事務所でしかも(部屋代が)100~200万円と書いてありましたが、どんだけ手厚いんでしょうか」(前出関係者)という印象がある。

 例えば2012年に一時期、東京都渋谷区内の新築マンションの1LDKに、前田敦子さん、大島優子さんらが生活していたことが明らかになったが、この間取りで家賃は1カ月約25万円と見られる。2人とも所属は太田プロ。しかし、月額200万円の部屋を借りていたとなると、どのメンバーなのかは気になるところだが、本当に手厚いとしか言いようがない。

 また、朝日新聞の報道では、前社長の交際費用4000万円も私的なものだと認定されている。

 悪質かそうでないかに限らず、芸能プロの申告漏れは実は多い。人的なコネクションが勝負の世界であるため、トップは元タレント、元マネージャーが多く経理・総務畑の人はいない。どうしても契約書や請求書がないドンブリ勘定の慣習は続いてしまう。また、なかには特定の相手に渡す裏金を作るために脱税をしたケースなども過去にはある。国税庁にとっては、そうした隙を突きやすい業種であることか確かで、今後も新たに勃興した芸能プロは「通過儀礼」として狙われていくことだろう。

◆近年の芸能プロの主な申告漏れ・脱税事案(事務所、発覚年、申告漏れ額)
・アバンギャルド 2009年 3億4000万円
・人力舎  2010年 2億4000万円
・LDH 2010年 3億円
・ビーイング 2013年 10億円
・ゴーディーエターテインメント 2014年 1億9500万円

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