三井だから買った「傾く2億円豪邸」バブル物件の教訓

 三井不動産レジデンシャルが分譲した横浜市内のマンション「パークシティLaLa横浜」のデータ改ざん問題で揺れる中、同社が過去に分譲した千葉県浦安市の東京ディズニーランド至近の邸宅らの住民148人が、液状化対策を怠ったとして同社を相手取った訴訟で東京地裁は、住民の訴えを棄却した。この件で考えさせられるのが、80年代後半のバブル期真っただ中に分譲された邸宅が中心で、1億円超えも数多く、中には2億円を超す豪邸も。いまさらながら、バブル期の物件購入にあたって、考えさせられる面も多い。

 浦安市の埋め立て地は、2011年3月の東日本大震災がきっかけで液状化した個所も多い。その被害を受けたとして、住民148人が計約32億円の損害賠償を求めたもの。判決では、永谷典雄裁判長は「液状化の発生は予見できたとは言えず、三井不動産に(液状化対策の)実施義務があったとは認めることができない」などと、住民の訴えを退けている。

 これらは東京ディズニーランドの敷地と至近距離に分譲されたもので、当時の募集パンフレットによると「ハイグレードライフを約束する環境や施設も充実」などとうたっており、実際に分譲されたものとしては、「敷地面積166平方メートル、4LDK、2億571万円」「敷地面積165平方メートル、4LDK、1億7933万円」など豪邸と呼ばれるようなものも多い。

 この埋め立て地の分譲地エリアでは、地元だけではく千葉県のほかの地域や、東京都心の高級住宅街の人たちも購入。地震によって家の傾きや、地盤沈下など様々な不具合が出たとして、原告となっている。

 高齢住民の男性は「購入するときは高価だったので、家が傾くような脆弱な地盤であるとは考えもしなかった」と述べている。中には「三井不動産だから買ったのに」という人も。東京ディズニーランド至近ということも人気を呼んだ。参考までに分譲時の浦安市の公示地価の推移を見ておくと次のようになる。

◆浦安市の公示地価推移
1986年 64万円
1987年 94万円
1988年 228万円
1989年 227万円
1990年 244万円
1990年 259万円
※価格は坪あたり、土地代データ参照


3・11後の浦安市の埋め立て地
 市内全体の平均のため参考程度だが、今回の物件の価格の正当性はともかく、ある不動産デベロッパーは「三井さんは全体に高めの価格設定に感じます。ただ、業界的には、買い手さえつけば高めの設定でも良しとなるわけです。そこは企業ブランドで勝負ができる三井さんならではでしょう」という。

 そこで被害の予見だが、住民たちは重要説明事項に液状化リスクの記述はなかったとしている。また、訴状では「サンドコンパクションパイル工法」(SCP)という、地盤中に締め固めた砂の杭を造成する液状化対策を施すべきであったとする。このSCPは東京ディズニーランドでは実施されており、被害はなかったという。ただ、震災前にはSCPは費用対効果に乏しいとも言われていたこともあり、今回の物件では、「ベタ基礎」という底板一面が鉄筋コンクリートとなる一般的な方法が用いられている。

 業界内では「バブル期の物件は避けよ」という警告もある。高い買い物だったか、安い買い物だったのか、後悔しないように購入時にはやはり用心深く検討しなければならない。

◆参考:NHKアナ逮捕、震災被害による浦安プチセレブの悲哀?

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる