ノーベル財団の資産運用年利15.8%、株からヘッジファンドへシフト

 スウェーデン王立科学アカデミーが発表した2015年のノーベル医学・生理学賞で、寄生虫やマラリアなどに関する研究で知られる大村智・北里大特別栄誉教授(80)が日本人として受賞した。副賞800万スウェーデンクローナの賞金の出所であるノーベル財団の資産運用だが、2013年の15.3%に引き続き、2014年もそれを上回る15.8%と好調である。その一方で、ヘッジファンド比率を大幅に増加させている。

 ノーベル財団は、インフレを考慮に入れた最低限でも年利3.5%以上を運用ノルマとしている。運用総額は38億6900万スウェーデンクローナ(以下SK、約560億円)に上り、株式、オルタナティブなどのアセットアロケーションで運用を行っている。近年の運用パフォーマンスは次のようになっている。

2007年 4.7%
2008年 -19.0%
2009年 14.4%
2010年 5.5%
2011年 -2.6%
2012年 7.8%
2013年 15.3%
2014年 15.8%

 2008年のリーマンショックは2ケタのマイナス運用になったものの、そのほかの年は安定的な運用が行われている。08年の運用損はノーベル財団にとっても大きな契機となったのか、2011年まで1000万SK出してきた賞金を2012年からは800万SKに減額している。その運用にあたっては、アセットアロケーションは次のようになっている。

株式 55%(56)
フィクスドインカム 12%(15)
オルタナティブ 33%(29)
()内は前年


大村智氏(ノーベル財団HPより)
 株式は45%が海外株式で、国内は10%。2014年の株式市場は相対的に好調だったために運用への貢献度は高いが、海外株式の比率は徐々に減らしつつあり、利益を確定しているようだ。また、フィクスドインカムは全体的に減らしており、特にスウェーデン国内のものを大幅に減らしている。一方でオルタナティブの割合を増やしており、ヘッジファンドの比率が23%で、2010年の13%からは段階的に増加し10ポイントも増加している。転換社債も3%になった。

 全米2位の規模を誇る公的年金基金カルスターズ(カリフォルニア州教職員退職年金基金、CALSTRS)が、運用資産総額の約12%にあたる約200億ドルをヘッジファンドや米国債などに振り分けることを検討していることが明らかになっている。

 一方で全米1位のカルパース(米カリフォルニア州職員退職基金)が約4000億円のヘッジファンド投資の引き揚を決めるなど、ヘッジファンドの組み入れの是非が別れている。

 ただ、株式市場で下落局面も視野に入れ始めて、どう動くかであるが、ノーベル財団はヘッジファンドの割合を増やしているようだ。2014年末時点の主なヘッジファンド運用は次のようになる。

DEショー         87万8000(108万)
チューダーBVIグローバル 3万7100(4万7500)
ブレバンハワード      5419万2000(702万7000)
バイキンググローバル    5579万2000(1億992万5000)
2シグマ          8514万9000(1億1919万6000)
ミレニアム         1億2977万2000(1億9466万2000)
()内が時価、単位SK

 ノーベル財団によると、最近クオンツ戦略で台頭している米NYの運用会社2シグマの運用が良かったことを述べており、簿価よりも4割の増加となっている。また、2シグマへ追加投資も行ったことも明らかにしている。

 また、2014年の財団のすべての支出は、ノーベル賞の副賞などを含めて9860万SKで、緊縮財政が続いている。

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