投資家から評価が高いヘッジファンドランキング

 2015年のヘッジファンド業界で、投資家から最も評価ポイントが高いランキング「ヘッジファンドレポートカード」が業界専門誌インスティチューショナル・インベスターズから発表され、1位は2本のファンドが10%以上のリターンを出したマーシャル・ウェイスに輝いた。前年は26位だった。

 この調査は、機関投資家が採点した8項目(アルファ創出、リスク管理、利害の一致、インフラ、透明性、独立した監視、投資家との関係、リクイディティ条件)によって総合ポイントで評価されたランキング。単にパフォーマンスが高いだけではなく、広く総合的に評価されたもの。ランキング1~5位は次のようになる。

1 マーシャル・ウェイス
2 ザ・チルドレンズ・インベストメント
3 アダージ・キャピタルマネージメント
4 シタデル・インベストメント
5 2シグマ

 1位のマーシャル・ウェイスは、ポール・マーシャル、イアン・ウェイスの両氏が1997年に英ロンドンで設立したヘッジファンド運用会社。ウェイス氏は運用会社マーキュリーアセットマネジメントで欧州株式の運用者、マーシャル氏はドイツ銀行で欧州株の運用者だった。ともに欧州株を得意とする同士が立ち上げ、欧州株の運用においては右に出るものはない。

 ファンダメンタルズを用いた株式ロング&ショートを主な戦略として採用しており、旗艦ファンドのMWユーリカファンドは、運用資産総額13億ドル以上。MWユーリカファンド2は、同8.7億ドルとなっている。また、欧州だけでなくアジア株式も手に手掛けており、インド、中国、日本も運用対象にしている。同社はPE大手KKRが同社の株式25%を保有している。

 今年の同社は2つの運用ファンドが10%以上のリターンをあげた上に、リスク管理、透明性、インフラで、投資家に高得点を付けられたという。

 2位のザ・チルドレンズ・インベストメントは日本でもおなじみの運用会社。パフォーマンス、利害の一致、透明性などで高評価を得た。アクティビストとして知られ、日本の電源開発に対して子会社の会社分割に反対するなどしたが、他の株主からの賛同を得られずに撤退している。2014年は創業者クリス・ホーン氏と、運用パートナーでもある前妻クーパー氏との離婚で係争が続いていたが、夫が妻に5.3億ドルを支払うことで決着している。

 3位のアダージ社は、ハーバード大の運用会社ハーバード・マネジメントカンパニーの出身者が設立。運用成績がS&P500インデックスを下回った場合には、投資家に手数料を返すことを公言するなど、非常に有利な料金体系が、投資家に高く評価され、利害の一致の項目でランキング1位となった。

 4位シタデルは、現在、業界最高年俸のケネス・グリフィン氏が設立した運用会社で、大手では超高速取引の代表的な存在でもある。アルファ創出など6項目でAランク評価を獲得し、旗艦ファンドのケンジントン&ウェリントンをはじめ複数のファンドが5年連続で2ケタのパフォーマンスをあげている。5位の2シグマはリーマンショック後から急速に注目を集めるようになったクオンツ系ファンドで、14、15年ともに好成績が目立っている。
 
 以上は最上位のAランクに位置するが、その一方で、最低ランクのFランクに格下げされた著名ファンドもある。

 英国の著名マクロ系ファンドのブレバン・ハワード・アセットマネジメントは2年連続で低パフォーマンスが響いた。また、株式アービトラージのペリー・キャピタルも2年続けて低成績が影響した。米著名アクティビストのグリーン・ライト・キャピタルは昨年20%以上もマイナスで、投資家との関係、リクイディティでも低い成績となった。先に投資家への資金償還で店じまいを発表しているブルークレストは、過去の従業員向けのファンドとの利益相反が疑われ、SEC(米証券取引委員会)が調査を行っているとも伝えられており、投資家との利害の一致と透明性において点数が低かった。

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