アメックスセンチュリオン(ブラック)、私はこう使っている


 アメックスの最高クラスカード「アメックスセンチュリオン」通称ブラックカード。

 知る人ぞ知るカードで、発行元のアメックスもその存在を公にしていない。
 日本国内はもとより、世界でも会員数は非公開で、入会条件も、基準も明示されていない。

 支払額の上限はなく、家でも戦車でも買えると噂だ。
 そのカードを持つことは、大きなステータスとされている。

 謎に包まれているアメックスセンチュリオンのホルダーは、どんな人なのか? そしてそのカードをどのように使用しているのか? 実際のホルダーに話を聞いた。

インビテーションは、使っていれば自然に届く

 センチュリオンホルダーのA氏は、都内に在住の40代経営者。自身が興した会社の成長とともに、保有するアメックスカードの色もグリーンからゴールド、その後プラチナへと変わった。

 センチュリオンのインビテーションが届いたのは今から5年ほど前。その頃は会社も個人の支払いも、ほぼすべてプラチナカードを使っていた。その額はかなりのもの、年間数百万円になる。

 そのような繰り返しをしていたところ、あるときセンチュリオンへのインビテーションが届いたという。

 入会時に支払ったのは、入会費35万円と年会費35万円の合計70万円。現在まで毎年35万円の年会費を支払っている。

 アメックスセンチュリオンは、プラチナなどその下のグレードのカードと比べ、どのようにサービスが異なるのだろうか。アメックスのホームページで公開されているのはゴールドカードの情報までだが、プラチナカードの資料には、以下のようなことが書いてある(アメリカン・エキスプレス・ビジネス・プラチナ・カード)。

・プライオリティ・パス(空港ラウンジの使用)
・手荷物無料宅配サービス
・エアポート送迎サービス
・インターナショナル・エアライン・プログラム(航空券の優待)
・ホテル・メンバーシップ(ホテル宿泊時のアップグレード)
・フリー・ステイ・ギフト(無料宿泊券プレゼント)
・プリファード・ゴルフ(有名ゴルフコースのプレー代無料)
 ほか

 年会費はプラチナ(13万円)の3倍近い。一体どんなすごいサービスがあるのか?

戦車はプラチナでも買える!?

「サービスは別に、プラチナと特に何も変わらないね」
 拍子抜けする回答だった。

「細かい違いやグレードアップはあるのかもしれないが、はっきり言ってどうでもいいレベル。そもそも一切使わないし」

 ではサービスはどうか? センチュリオンだからこそのサービスがあるのではないか?
「センチュリオンになると、コンシュルジュは専属の人がついてくれるんだが、これがまぁ役に立たない。
 たとえば、すでに満室のホテルでも、コンシュルジュ経由ならば、アメックスで押さえている枠に泊まらせてもらえたりするのかなと思ったが、そんなことなかった。

『この日程でこの場所に行きたい。旅行のルートを考えてチケットとホテルを押さえて』と頼むと、とんでもなく高いプランを持ってくる。
『高いプランは頼んでいない。この行程で一番安い組み合わせでよろしく』と頼んで出してもらったものも、誰でも使える旅行サイトで申し込むのと同じような金額か、そっちのほうが安い。全然お得感がないんだよね」

 ではポイントはどうか? ポイントはセンチュリオンのほうが多く貯まったりするのではないか?
「空港ではお金を使わない、飛行機代を何年も払っていないというのは、プラチナの頃から同じ。センチュリオンだからプラスというのは、実感としては何もない。
 それなのに年会費だけはやたら上がって、『得だから持つ』みたいなのは1つもないね。

 センチュリオンでは戦車も買える、家も買えるなんて噂があるけれど、本当に買おうと思えばおそらくプラチナでもできるよ。
 アメックスはカードのグレードに関係なく、決められた使用上限額がない。つまり使用できる額はユーザーの日頃の利用具合によって決まるってこと。
 普段1億円使っていたら、1億円以上の買い物がプラチナでもできるはず。

 あと、アメックスはよくユーザーのヒアリングをやっているね。『サービスに関して、何かご不満な点はありますか?』と聞かれるので『不満しかありません』と答えているね(笑)」

メリットはたった1つ

 話を聞けば聞くほど、アメックスセンチュリオンに対する夢や幻想が打ち砕かれていく。高い年会費を払って持つ意味があるのだろうか? そんな気さえしてきた。それに対するA氏の回答は以下だ。
「センチュリオンカードが役に立つと感じるのは、地方の一見客として行くホテルやレストラン、お店だね。

 今ではまずないけれど、昔はたまにアメックスでは支払いができないお店があった。確認も兼ねて最初に『支払いはこれで大丈夫ですか?』とカードを見せておくことをしていて、今でもその名残で同じことをやっている。
 センチュリオンカードを見せると、ホテルやお店に『この人はちゃんとした客だ』と安心してもらえる。いわば名刺代わりだね。それ以外は何もないな。

 もしかすると、センチュリオンを見せたことでサービスがよくなったりといったことがあるのかもしれないけれど、わかんないし、そういうことを求めているわけでもない。

 センチュリオンを持ちたがる人は、それがステータスであったり、自慢できるからといったことが理由だと思うんだが、面白いもので、そういう人のところにセンチュリオンの招待は行っていないんじゃないかな。
 実際に持っているのは、僕みたいにありがたがらなくて文句ばっかり言う人だけ(笑)。そんな気がするね」

 以前、銀行の融資担当者に話を聞いたことがある。「どんな会社に融資をしたいのか?」と。
 答えは「経営者が『うちは一切借りる必要がないくらいお金があるし、もし借りてもこういう返済スケジュールできちんと返す』と言う会社」だった。

 逆に「貸してもらえないと会社はつぶれてしまうんです。今すぐ貸してください」という社長には、絶対に貸さないとのことだ。

 世にセンチュリオンを持ちたい人はたくさんいる。アメックスはインビテーションを送る基準を明らかにしていないが、支払いの履歴等から判断して「プラチナで特に何も困らないからいいよ」という人のところに、インビテーションは行っているようだ。

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