2017年、ヘッジファンドの帝王レイ・ダリオが吼える!

 2017年が始まった。大発会では4年ぶりの上昇、終値は前年末比479円79銭高の1万9594円16銭で1年1カ月ぶりの高値と、景気のよいスタートを切った日経平均。

 ヘッジファンドではどのような動きがあるか。さっそく年末年始にかけて、早くもその動きに注目が集まっている人物がいる。
 ヘッジファンド界の帝王、「ブリッジウォーター・アソシエーツ」のレイ・ダリオ氏だ。

目指すは「経営の自動化」

 ダリオ氏が創業したブリッジウォーターは、ヘッジファンドとして最大の1600億ドル(約18兆円)の資産を運用している。
危ない橋を渡らないバランスのよい運用スタイルで、およそ350のクライアントには公的機関や大学、公的年金基金、慈善財団、国の中央銀行や政府機関なども含まれる。
 彼自身二度の生涯功績賞を受賞しているほか、ブリッジウォーターも数十の優秀賞を受賞している。
 米専門誌インスティチューショナル・インベスターズが発表している2015年のヘッジファンドマネジャーの報酬ランキングでは、ダリオ氏の報酬額は世界第3位、14億ドルだった。

 長年にわたり高い運用成績を記録しているブリッジウォーターだが、2016年は多くのヘッジファンドが運用成績で苦しんだように同社も苦戦した。
 旗艦ファンドの運用成績は一時、前年同期比で約12%減となった。
 このファンドはその後持ち直し、2016年12月中旬には3.9%増とプラスに転じ、より手数料の安いものは8.1%増の運用成績を記録したが、例年の成績に比べると落ち込んでいる。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ブリッジウォーター内では極秘プロジェクトが進められているという。そのプロジェクトが目指すのは、経営に関するほとんどのことを自動化する技術だ。
 そのような動きの背景には、ダリオ氏の後継者問題がある。創業者のダリオ氏は現在67歳。彼がいなくなった後、どうすればブリッジウォーターの企業文化が維持できるかという問題だ。

 ダリオ氏が会社から離れた状態でもブリッジウォーターの経営が行えるよう、彼は後継者候補として外部から著名人を招くなどしたが、どれも彼の求めるレベルに達しないとし、会社を去った者もいる。
 後継者問題は、喫緊の課題だ。

技術でダリオ氏の「原則」に切り込む

 後継者問題はカリスマ創業者が大きくした会社にはつきものだが、どこの会社も同じで、そう簡単には見つからない。
 特に、ダリオ氏の思想は会社のDNAそのものでもある。ブリッジウォーターの社員に渡されている『プリンシプルズ』はダリオ氏の考えをまとめたものとして、社員は理解することを求められる。

 プリンシプル(原則)は210にも及び、社員自身にも、同僚にも「これは本当か?」と常に問いかけるよう推奨され、新入社員がこの文化に慣れるまでおよそ18カ月を要するという。
 そこまでの確固たる教えゆえ、同じように理解し、行動することのできる後継者などまず現れない。そのため進められているのは、ダリオ氏の原則を、技術を用いて使えるようにする取り組みだ。

 ブリッジウォーターの導入した、経営自動化のためのソフト開発プロジェクトを行う中心となっているのは、かつてIBMで人工知能システム「ワトソン」開発チームのリーダーを務めていた人物だ。

 ソフトの「コーチ」というアプリは社員が質問を入力すると、ダリオ氏の『プリンシプルズ』の中から、その質問に関連する一節を参照するよう指示が返ってくる。
 その工程を繰り返していくうちに、ブリッジウォーター内で「レイ・ダリオの原則」を知るだけでなく、「我々社員1人ひとりの原則」へと進化していき、原則を活かしながらも、ダリオ氏が不在でもその考えが継承される仕組みへと変わっていくという。
 
 そのほかにも、開発した技術を活用して、社内の空きポジションを調査して、各ポジションにふさわしい能力や長所を持った人材を社員の中から見つける等していく取組が進められており、最終的には経営に関する決定事項のおよそ4分の3をコンピューターが行う状態を目指しているという。

 これらについて報じたウォール・ストリート・ジャーナルについて、ダリオ氏は2017年の現地時間1月3日、SNSのリンクトインに「自社が機械を使って圧政を敷いているかのような表現は誤解を招くものだ」と投稿し、同紙の報道内容について「主要メディアによる不正確な報道は社会の脅威になる」と厳しく批判している。

 ダリオ氏からの批判を受けたウォール・ストリート・ジャーナルはブルームバーグの問いに対し、広報担当者が「125年余り続く同社の高い報道基準が、今回のケースにも完全に適用されていると確信している」と、電子メールで回答している。

トランプ政権への期待

 ダリオ氏は、トランプ次期米政権に対し大きな期待を寄せている。
 彼はリンクトインに見解を投稿し、トランプ政権がアメリカや世界に対し強いイデオロギー的インパクトを放つことは間違いないとした。1979年から82年にかけてアメリカとイギリス、ドイツが経験した「社会主義者から資本主義者」への政権のシフトよりも著しい経済的な変化が起きる可能性があるとしている。

 トランプ氏は大胆でタフな交渉人であり、彼の選んだ人物たちも同様で、「彼らの大胆さは、新たな4年間を面白いものにするのと同時に、我々全員を気が抜けない状態に置くことはほぼ間違いない」と語った。
 彼の政権は、経済や外交政策に関して、ほかにも教育や環境問題などについても大きな変化をもたらすだろうとしている。
 税制改正や財政支出といった政策により予想できるよりも、はるかに大きな影響を米経済に与えうるとし、トランプ政権は「アニマルスピリット」を呼び起こし、生産資本を呼び寄せることができるだろうとしている。

 また、このような大きな動きの起こる環境下では、投資家も現金をハイリスクな金融資産に買える動きが非常に活発になりうると予測した。

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