好景気は東京五輪以降も? 建設業界見通しレポート

 クレディスイスが「Tokyo 2020 and Beyond」を発表した。建設業界の現状と今後の見通しについてのレポートだ。

「2020年までは好景気が続くが、その後は不景気まっしぐら」といった不安の声も多い建設業界だが、同社はどのような見解を示しているか解説する。

好景気は東京五輪以降も続く見込み

 建設関係の好景気は、東京五輪までは言うまでもなくだが、その後は反動、揺り戻しがくるのではなく、よい状態が続いていくと同社は予測している。ただし、さすがに2020年は数十年に1回の大きなイベントゆえ、そのときは異常なまでの好調、最盛期であり、その後はゆるやかになっていくだろうとする。

 同社は、インフラ関係の投資額は2015年の50兆円から2025年には55兆円に増加すると予測している。この中にはオリンピックの選手村やアスリート用施設、五輪会場の建設などで2700億円が含まれている以外にも、五輪後に行われる工事が含まれる。


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 五輪後も建設業界の反動が少ない理由として、同社はその後も続く公共工事の多さを挙げている。
 2011年の東日本大震災後も、熊本、鳥取などで地震が頻発し、復興のための工事が盛んだ。国全体で地震対策予算が増加しており、工事は五輪に関係なくその後も行われていく。新たな災害が起こればまた予算も人員も必要になる。
 災害に関係なく、首都高速道路と東京外環自動車道の工事にも、巨額の予算が割かれている。

 このほかに大きく予算を必要とするのが、投資ではなく「既存のインフラのメンテナンス費用」だ。2033年には日本中の橋、トンネル、堤防などのうち、完成から50年以上を迎えるものが半分以上を占めることになり、修復等にかかる費用も発生する。

 リニアモーターカーへの投資も進んでいる。公共と民間が共同して進めているこの事業は、現在ルートがどうなるかなど決まりきっていないところが多々あるが、2027年の東京名古屋間、2045年の東京大阪間開業を目指している。それに関連して駅や周辺地区の再開発なども進む。

 民間投資も伸びると予想されている。公共工事に比べその規模は半分程度だが、建設費は2011年以来上昇を続けている。

投資家はどこにチャンス?

 大成建設の山内隆司会長は経済界の集まりでテレビ番組のインタビューに答え「今は国内で手いっぱいで海外に目を向けている余裕はない」とコメントするなど、建設会社は軒並み好調で、過去最高益を記録しているところもある。

 ただし、当人たちは好景気に浮かれている様子はなく、その後伸びは低下すると考え、自社株買いなどをして備えている。
 その大成建設は、5月に自社株200億円相当を買い戻すと発表した。クレディスイスは、他の大手建設会社3社が同じような動きをするか、株価下落の可能性に備えるかの動きに注目している。

 クレディスイスは、投資家の関心は建設会社の動きが鈍化した後はセメント会社に移るのではないかと考えている。オリンピックと高速道路の工事が終わった後は、投資家にも大きなリターンが期待できるからだ。
 キャッシュを投資家への配当に回す会社もあれば、住友大阪セメントは2016年初頭に45億円の自社株を買い戻すなどし、建設業界と同様に備えている。

 建設やセメント業界に比べ、今のところ好景気とはなっていないのが鉄鋼業だ。中国需要が低迷していることもあり、多くの高炉メーカーはほかのアジアの国への輸出に依存している。
 価格は上がっているが円高の影響などもあり、競合に対し分が悪い。

 一方で電炉メーカーは国内需要に対応しており、今後市場から受けられる恩恵は大きいと予想される。そうなれば投資家への還元も期待できるとし、鉄鋼メーカーの中には高配当を謳っているところもある。

 恩恵の多いところ、少ないところ都があり、勝ち負けもはっきりしてきているが、全体的に見て好調な建設業界、その動きは今後も続きそうだ。

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