ホリエモンもやっている 急増する男性の脱毛

 現在、男性の脱毛がひそかに人気を博している。
「そんなもの誰がやっているんだ?」と思う人も多いだろう。脱毛したことを公言している、ホリエモンこと堀江貴文氏の話を取り上げる。

 堀江氏は自身のブログで、こう語っている。
「刑務所にいたとき、部屋が狭いので何もしていないのに毎日抜け落ちている自分の体毛が見つかるわけですよ。レーシックをやって目がよく見えるようになってるもんだから見えちゃうんですよ。そこに1本、ここにも1本っていう感じで気になって仕方ない。

 それを毎日いちいち拾ってゴミ箱に捨てて『わ〜面倒くさいな』っていつも思ってたんです。そしたらテレビでJリーガーの欧州へ行ってるサッカー選手はみんなツルツルだっていうのを見て、『俺もツルツルになりたいな』って思って」(HORIEMON.COMの内容を、一部編集)

 男性の脱毛のニーズは、大きく分けて2つ挙げられる。1つは、堀江氏のように体毛が汚らしいので除去したいというケースだ。
 体毛が濃いことが悩みやコンプレックスという人は多い。脱毛治療を行い、その苦しみから解放されることを目指す人は多い。
 もう1つは、時間を節約したいと日常の利便性を考慮してのケースだ。これも堀江氏が刑務所にいたときのことを語る。

「あそこ(刑務所)に入ってる人ってヒゲの処理が大変なんですよ。
 ヒゲってお風呂の時間に剃らなきゃいけないんです。もしくは電気シェーバーなんだけど、シェーバーもこれじゃないとダメっていうのが売ってて、中で買うと2000〜3000円するんですよ。
 安いと思うかもしれないですけど、中の給料で言うと多くの人たちにとっては1カ月分より高い金額ですからね。面会で差し入れがある人はいいんですけど、面会に来ない人もいるじゃないですか。
(中略)


ヒゲ剃りの時間も節約できる Getty Images
 だからみんな必死で買うんですよ。頑張ってシェーバー買っても電池が切れると次の購買日まで待たなきゃいけない。電池が切れたからってヒゲを伸ばしてると怒られる。15分しか入浴時間ないのにのんびりヒゲ剃ってたら風呂に入る時間がなくなっちゃったりするんで、ヒゲの濃い人は可哀想でしたよ」(引用同ブログ)

 成人男性がヒゲを剃っている時間が1日10分だとして、1年365日剃ると3650分となり、60時間分、ゆうに1年のうち2.5日分をヒゲ剃りに費やす計算になる。

 ヒゲを脱毛し、この時間と手間暇をかける必要がなくなったならば、大きな時間の節約となる。朝に時間のない人などが、このヒゲ脱毛を行っている。

「見た目を良くする」重要性が高まっている

 最近、男性が脱毛を行う例が増えているという。男性専門脱毛クリニックの最大手であるメンズリゼクリニックの院長、医師の赤塚正洋氏に話を聞いた。
「堀江さんがおっしゃるように、脱毛に来られる方の目的は主に2つですね。見た目を良くしたいというのと、時間を節約したい。
水泳、トライアスロンの選手などは、体毛が競技の邪魔になることからとトップ選手は脱毛していますが、そのような目的の方は全体からすると少数かもしれません。

 ハイクラスなビジネスパーソンは相手に与える印象の大切さをよく理解していて、『自分がどう見られるか』に意識を向けている人が多いように感じます。たとえばプレゼンテーションをするときの手の甲の毛を脱毛する、といったものです。
そのような方々からの施術依頼が非常に増えています。

 不潔なのは論外、第一印象で好印象を与えるとビジネスもうまくいくとわかっているのでしょう。ほかにもワキの下の脱毛は、見た目を良くするほかにも、汗をかいたときの匂いが気になるという方からのご依頼が多いですね。

 時間の節約という面での効果は、やはりヒゲが一番高いですね。ヒゲは体毛の中でも、伸びるサイクルが早いものです。朝出かける前にきれいに剃っても、夕方や夜には伸びている、ヒゲ剃りを持ち歩き1日に何回も剃るという方もいらっしゃるでしょう。
 脱毛すれば、その手間から解放されます。『出張でひげそりを持たなくてよくなった』という声もいただきます。

 ほかにもあるのは、肌の負担を減らしたいニーズですね。ヒゲを剃るのは、刃を肌に当てているわけです。肌の角質を毎日削っているのと同じですから、肌の弱い人はカミソリ負けを起こしたり、荒れたりします。人によっては、それがなくなるメリットは大きいようです」

人気があるのは全身の脱毛

 脱毛といっても、行う種類は千差万別だ。頭髪を除くあらゆる体毛に対して行える。どの部分の毛をなくしたいか、またどのくらいなくしたいかを、希望や予算に応じて選ぶことができる。

 もっとも多い年齢層は20~30代で、時々中高年や、なかには60~70代の人もいる。
 女性向け脱毛の需要は昔からあったが、ここ数年、男性向けの需要が大きく伸びており、リゼクリニックは女性向けで2010年に開院後、男性患者が増えたことから2013年に男性向けを開院、顧客の数は開院当初から16倍に伸びているという。

 かつては「胸毛など体毛は男らしさの象徴」とされた時代もあったが、今は「濃い毛は汚らしい、不潔」といった印象を与えるものへと変わってきた。体毛が競技の邪魔になるアスリートや芸能人でない限りする人もいなかった脱毛が、一般人にも普及するようになってきたのだ。

 体のデリケートな部分に生えている毛の処理は、女性のいる場では行いたくないという人も多く、男性専門だから通いやすいという需要は多い。
 先述の男性専門脱毛のメンズリゼクリニックも、2017年1月現在全国に14院を展開する。

 体毛をきれいになくすこともできれば、「毛深いのが悩みなので一般的なレベルの濃さにしたい」といった要望もあり、それも対応可能だ。

できれば医療機関での脱毛を

 実際の治療は、どのようにして行うのだろうか。
 まず毛を剃ったあと、脱毛したい箇所にレーザーを当て、毛根やバルジ領域という育毛に関わっている部分を破壊する。

 脱毛治療は、以前はとにかく痛いもの、長い間我慢が必要なものという印象が強かったが、今は時間もかからず、体への負担も少なくて済む。ヒゲならばレーザーを当てるのは1回15~20分、体の脱毛は上半身で1時間半、下半身で1時間半というところ。それを数回行えば、治療は完了だ。

 レーザーはピンポイントで当てるので、脱毛したいところにのみ当てることができ、ほかのところへは影響しない。「体の脱毛で髪も抜けるのではないか?」といった心配は無用だ。
「ヒゲを残してもヒゲの周りの汚い毛は生えないようにしたい」といった脱毛も可能となっている。
 レーザー治療により毛根に熱が伝わるため、それなりの痛みはある。特に全身になると広範囲のため、軽い炎症ややけどは起こるという。ただしそのあとは収まっていく。健康への影響はまったくない。

 脱毛を行えるのは主に、エステサロンと医療機関だ。できれば医療機関で行ったほうがいい。脱毛というと簡単なものの印象があるが、行うことは間違いなく医療行為であり、医療機関であればドクターがいることで医療用のレーザー脱毛機を使用でき、効果が高い。医療機関のみでできる施術を行うことで、結果的に少ない回数で完了するほか、ドクターがいるので何かあったときのリスクも低い。

 厳密な言葉を使えば、エステで行う脱毛は「減毛」、一時的に毛を減らすことであり、医療脱毛に比べ効果は低い。
 そのためエステ脱毛が15回~18回行うことが、医療脱毛ならば5回相当となる。

 費用は、メンズリゼクリニックの医療脱毛の場合、部位や回数にもよるが、ビジネスマンが特に注意したいヒゲ3部位のセット価格が5回コースで59800円だ。

 冒頭で紹介した堀江氏も、最初はそれほど乗り気ではなかったそうだが、1度経験してからは追加で行うようになり、合計で7回も脱毛しているという。
「脱毛なんていらないよ」と思っている人ほど、実はハマってしまうかもしれない。

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