相続税額を1/10にする賢い税理士の選び方

監修:田中誠(相続専門税理士・税理士法人エクラコンサルティング代表)

目次

選定のポイントは?

 相続税を節税するうえで欠かせないパートナーが、税理士です。

 どのような税理士に依頼をするかで、節税額に大きな差がつくこともよくあるのです。税理士の力で、納税額が10分の1になることもあります。

 なぜそのように差がつくのでしょうか? 税理士の能力には、そんなに差があるのでしょうか。
 能力の差だとも言えますし、違うとも言えます。
 税理士の仕事は、基本的に誰がやっても同じ結果になるようにできています。税金の計算ですから、人により違いがあってはおかしいのです。
 そのため「あの先生だけが使える節税の裏ワザ」は存在しません。もしあるようならば違法の可能性が高いでしょう。
 能力ももちろんですが、もっとも大きいのは、専門分野の違いです。

 税理士と聞いて、どのような人とイメージされるでしょうか。
「税金に関するあらゆることをやってくれる人」
 そう考える方が多いと思います。

 税金といっても、種類がたくさんあります。大きく分けると、法人税など、会社に関する税金か、所得税、相続税など個人にかかる税金です。
それぞれの税金が、専門家の必要な、複雑な分野なのです。

 多くの人が相続税に関してやってしまいがちな失敗は、会社経営などで顧問契約をしている税理士に「今度相続が発生したんだけど、相続に関する手続きをお願いしたい」と依頼することです。

 会社や事業で関わっている税理士は、税理士の専門分野で言えば「法人税が専門」ということになります。
 さらに、「法人税申告専門」の税理士だったりすると、相続税対策では失敗する可能性が高くなります。
「法人税が専門」の税理士は、法人税法を熟知し、経営をサポートしたり、効果的な節税の方法をアドバイスしてくれたりします。
「法人税申告専門」だと、記帳代行や申告がメインとなります。

 法人税申告専門の税理士に相続の手続きを依頼すると、機械的に「では相続税は○○億円になりますね。いつまでに支払ってください。支払えない場合は不動産や自社株など資産を売却する等して対応をお願いします」という手続きをすることになります。
 依頼する側が税理士に頼みたいのは、相続税を減らすことや、自宅を手放さずに済んだり、事業承継に支障がないよう相続税を支払えることでしょう。

 ただしこれは、その税理士を責められないところでもあります。彼ら彼女らにしてみれば、専門が違うわけですから、専門外のことを頼まれて、できることをする結果です。
 相続はどこの家でも発生するものなので、そのマーケットは大きいと言えます。そのため、多くの税理士が「相続の手続きができます」と言っています。ですが、「手続きができる」と「節税の提案やその実行ができる」税理士は違うと知っていただければと思っています。

 実際に、会社の事業に関しては顧問税理士がいても、相続に関しては別の、相続が専門の税理士に依頼している社長さんもいらっしゃいます。
そのくらい別のものだと思っていただければと思います。

「相続のその先」を意識して税理士を選ぼう

 では、どのようにして相続に強い税理士を見つければよいのでしょうか。
 個人の税理士事務所よりも、職員の数が多く-規模の大きな事務所や、名前の知られている税理士法人がよいのでしょうか。
 確かに大きいところは人数が多いので、深い専門知識を持った税理士に出会える可能性は高くなると言えるでしょう。

 ただし、「大きい」といってもその内容は様々です。その大きさは、大企業の規模の大きな税務申告を主にしているかもしれません。大きいからよいとも、ダメとも言えません。
 大切なのは、その税理士がいかに相続の実務経験、実績を持ち合わせているかにかかっています。
 相続は、不動産や未上場株式など評価が難しい資産が関係してきます。
 効果的な相続、相続税対策を行ううえでとても重要になるのが、その税理士がどれだけ相続だけでなく相続税に精通し、多くのケースを知っているかです。
「この場合はこうだった」と言えることが強みです。

 税理士が土地の現地調査にも同行するかもポイントになります。現地に行かない税理士もいますが、相続を専門にしている私は必ず行きます。それも依頼人にも同行していただいて。なぜかというと、税務調査に備えるためです。多くの場合、相続税を申告した翌年に税務調査が行われますが、相続税の実調率は24%とされています。そのとき、80%近くの非常に高い確率で申告漏れが発見され、追徴課税をされているのです。

 申告漏れと判断されるのは、税務調査で調査官の指摘に対し、万全な準備をしていないからです。税理士も納税者も、聞かれたことにしっかりと根拠をもって答えることができれば、追徴を課される可能性は低くなります。

 相続税の手続きは、申告して納税をすれば終わりではありません。きちんと計算して申告し、税務署がそれを認めることで、ようやく終了するのです。
 そこまでをきちんと、責任を持って行ってくれる人に、相続税申告は依頼したいものです。

「相続のこと、すべてやります」に注意

 専門家の力を借りながら、相続税を節税できる人はどういう人か? 税理士にすべて任せるのではなく、自分でよく調べたうえで、「こうしたいのだが、専門家の意見を聞きたい」とか、「この場合はどうなるか教えてほしい」といった人たちです。
 大切なのは、人任せにしない、ということです。

 現在、相続税が改正になったことで、その周りのビジネスは活気づいています。
「その土地、持っているだけでは相続税がかかりますよ。アパートを建てませんか?」といった営業や、「相続のわずらわしいことはすべてお任せください」と言う金融機関などが、対象となりそうな人にどんどん営業をかけているのです。

 自分で調べていて知識があれば「この土地にはアパートを建てるよりももっといい対策がある」と断ったり「言われたとおりすべて依頼すると手数料が高くなるので不要」と判断することができます。

 冒頭でお話しした通り、相続のことを家族で考え、全員で生前から相続のことを戦略的に準備していたチームには、すばらしい恩恵がもたらされています。
 大切なのは、長期的な視野に立った戦略なのです。

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