富裕層は株主総会に行かない

何かが「決まる」ことはほとんどない

 株主総会の時期が到来した。
 かつては6月最終営業日の前日に行われることの多かった株主総会だが、最近は開催日も分散している傾向にある。

 日経平均が好調なこともあり、業績好調、株価も上昇という企業も多く、そのような会社の株主総会は、おおむね和やかだ。「会社のファンだ。この調子で頑張ってほしい」といった、応援の言葉を寄せる株主も多い。
 経営が危機のとき、業績降下中の株主総会は、荒れる。今年3月に開かれた東芝の臨時株主総会では、巨額の赤字を計上したことに対する怒号が飛び交ったという。
 業績下降中の株主総会では、経営陣の退陣を要求するような声も上がる。

 ただし、株主総会では様々な経営に対する案は出されるが、それらが採用されることはまずない。もちろんなかには的確なものもあり、経営者も株主からの意見ということで、経営陣も「検討させていただきます」と答えるものもあるが、小規模の株主が思いつくようなものは、経営陣もすでに検討していることがほとんどだ。

 株主総会には「総会の議案事項」が事前に提出されていて、当日に話し合われることになり、投票などが行われることもあるが、たいていは発表、説明→拍手をもって承認 で終わる。
 大企業になれば企業が自社株を大量に保有しているほか、他社とも互いに株式を持ち合っていて、それが大多数を占めることから、小規模な株主が反対したところで会社提案が否決されることは、ほとんどない。

大きく動くことは例外

 珍しく株主総会で激震が走ったのが、2016年6月28日のことだ。石油大手の出光興産の創業家が株主総会にて、代理人を務める弁護士を通じて、出光の進めている昭和シェル石油との合併に反対を表明したのだ。
 弁護士は、創業家は筆頭株主の日章興産などを通じて出光株の33.92%を握っており、合併などの重要案件を総会で否決できる立場にあるとした。

 創業家は反対の理由として、出光と昭和シェルの企業文化や事業戦略に大きな違いがあり、合併しても相乗効果が得られないことを挙げた。
「社員は家族」を掲げ、今も労働組合がない出光に対して昭和シェル石油にはあること、出光は石油の調達先としてイランと親密だが、昭和シェル石油にはサウジアラビア国営のサウジアラムコが出資していることなどを挙げた。

 経営陣は創業家の説得に入り、現在も交渉は続いているが、合併に関して結論は出ていない。

 このようにいろいろな思惑の交差する株主総会であるが、富裕層は株主総会にどのように対応しているのだろうか。ゆかしメディアが調査したところ、「株主総会に積極的に行く」という人は少なかった。
 富裕層は複数企業の株を、長年にわたり大量に保有していることが多いため、同時期に集中する株主総会に行こうにもとても行ききれない、毎年でそう劇的に何かが変わるものでもない、また当日配られる出席者用プレゼントなども特に要らない、といったものが多い理由だった。
 経営や現行体制に積極的に意見、という人も少ない。大量に保有する株から、年により差はあるがある程度決まった配当金を受け取る、というスタンスだ。

 ただし、株を持つ会社の経営に関しては「つぶれなければいい」くらいのスタンスでも、マネーの流れには目が向いている人が多いため、「配当金がいつ頃入ってくるか」だけは覚えている、という人が多い。

 記録などしていなくとも「あの会社の配当金がそろそろじゃなかったっけ?」と思い出すという。

 富裕層と株主総会の付き合い方は「資産運用は手を加えれば加えるほど損をする。一番儲かるのは放っておくこと」を地で行くような話だ。

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