慶應ニューヨーク学院 こう対策すれば受かる

求められるのは「英語で自分の考えを伝える」力

 慶應ニューヨーク学院の受験対策としてどのようなものが必要か? 日本から受験し、現役のニューヨーク学院生は語る。
「問題の傾向に沿って国語、英語、数学の勉強をしたのはもちろんのこと、エッセイについてしっかり対策をしたのがとても役に立った」

「エッセイ」とは何か? 英語の試験で出てくる、自分の考えを論理立てて、さらに英語の文章にして答える問題だ。
 その場の限られた時間の中で考え、文章にする過程で、受験者のそもそもの頭のよさや英語の語彙力などが問われる。

 アメリカの授業では「書かせる」ものが多い。アウトプットする力、論理的な文章を書く力は、いかに自分を表現できるか、自分にポテンシャルがあるかを証明することでもあり、単なる受験対策に留まらず、その後ニューヨーク学院というアメリカの学校で学んでいくうえでも非常に重要な能力だ。
 前回記事富裕層の子息が通う慶應ニューヨーク学院の実態で重視されているとされた「論文力」がこれに当たる。
 実際に、英作文の力がある生徒は、ニューヨーク学院入学後も好成績の傾向がある。

これまでの試験で出題されたエッセイのテーマとその対策

 これまでの試験では、以下のようなテーマの問題が出ている(問題文はすべて英語で、ゆかしメディア編集部が日本語訳している)。

・「子供にとって親は教師よりも重要である」(2017年度)
・「あなたがどちらか一方しか選べないという重要な選択を強いられた経験において、その際にどのように判断したか書きなさい」(2016年度)
・「四季がある国に住むのが良い」(2015年度)
・「オリンピックは世界にとって良いことである」(2014年度)
・「行ってみたい場所とその理由を書きなさい」(2013年度)
・「10年後あなたはどうなっていたいですか。どのような仕事をしていると思いますか。そのために慶應ニューヨーク学院はどのような貢献ができるでしょうか」(2012年度)
・「SNSなどネットを通じたコミュニケーション手段は豊かになりました。あなたはこうしたネット上でのコミュニケーションをどう思いますか」(2011年)


入試問題は慶應ニューヨーク学院のHPで公開されている
 具体的なものから抽象度の高いものまであり、問題を見ればわかるとおり、「これが正解」「どちらが正しい」と言えないことが問われる。
 エッセイで問われているのは、「出題者の意図にきちんと答えられているか」「論理的で、破綻がない文章を書けているか」そして「間違いのない英語で書けているか」だ。
 誰も言っていないような飛び抜けた意見を言う必要はない。きちんとした理由に基づいて、自分の考えを正確に述べる。そこにスキがなければ高得点となる。

 そして英語の試験なので、その内容を英語でしっかり伝えられることも重視される。文字数制限はなく、英語で長く書ければ書けるほど評価される。「英語を長く書ける」とは英語の構造を理解している、語彙を知っていることの証明にもなる。
 なお、決して難しい英語を使う必要はない。基本的な英単語でも、しっかり内容を説明できるものであれば評価される。

 日本語の文章に「起承転結」などの書き方の決まりがあるように、英文エッセイにも書き方のルールがある。
 生徒はまずそのルールを覚えながら、書き方を学んでいく。具体的には以下となる。

1.Introduction(紹介)
2.Body paragraph(内容)
3.Conclusion(全体のまとめ)

 このルールは「書き方の決まり」であると同時に、「考え方の決まり」でもある。考える際は上記の内容をきちんと踏まえられているか? を意識しながら、文章を組み立てていく。

 慶應ニューヨーク学院の受験対策を指導しているキャタルでは、エッセイの練習について3つのパートに分けている。
 1つは「そもそもの考えを固める」1つのテーマに基づいて、クラス内でほかの生徒とディスカッションをしたりして、自分の考えをまとめたり、ほかの生徒の意見を聞いていろいろな考えを知る。

 この日与えられたテーマは”All teenagers should have paid jobs while they are students”(すべての未成年者は学生のうちに支払いを受ける仕事をするべきだ)。

「働いたほうがいいと思う」と答える生徒に、教師は「なぜそう思う?」と問いかける。生徒は黙ってしまう。思いつき、なんとなくそう思っただけだからだ。理由など言った本人もわからない。

 思いつきだとしても、必ずそう思った根拠はある。その部分をしっかり引き出せることが、しっかりした論理展開の文章を書けることにつながる。
 生徒は「なぜそう思ったのか?」を自分自身に問いかけ、納得できる答えを引き出していく。

とにかく書いて、見てもらい、直す、の繰り返し

 指導のパート2は「書く」自分の考えをまとめたならば、英語で文章にしていく。日本語でしっかりした論理構成を作れても、英語で表現できなければ意味がない。また、どんなに英語が堪能でも、そもそもの考えが稚拙では書ける文章も稚拙に終わってしまう。
 論理的思考力と英語力は、どちらが欠けてもいけないものだ。そしてその能力は、実践でしか向上しない。

 ひたすらに書く。書くためにまず考える。書いていくことで思考も整理され、より考えも深くなっていく。また書くことでさらに考えも深くなる。それを繰り返す。

 また「日本語でまとめたことを英文で書いていく」をすることで「言いたいことの英単語がわからない……」「こう言いたいときはどんな表現を使えばいいのか?」といった経験をする。
 わからない単語について辞書を引き、知る。実はそれが、英単語や語彙を身につける非常に効果的な方法だ。

 指導のパート3が「よいフィードバックを受ける」どんなに書いても、前提が間違っていたり、漏れ・抜けがあると高評価のエッセイにならない。書いたらすぐに教師がチェックし、採点する。本人はしっかり書けているつもりでも、論理に破綻があったり、書くべき内容が入っていなかったりするので、そこを指摘する。

 先ほどの「すべての未成年者は学生のうちに支払いを受ける仕事をするべきだ」についてのディスカッションで「働いてお金をもらわないと暮らしていけないから働いたほうがいい」と答えた生徒がいた。
 教師は「問題をよく見て。『学生のうちに』とある。学生が“暮らすために働く”必要はあるかな?」と問う。生徒は「あっ」という顔をする。

 エッセイの力を鍛えるのは、とにかく「数稽古」いかに多くの問題に取り組み、エッセイを書き、フィードバックを受けてその質を高めていくかにかかっている。
 いくつものテーマでエッセイをこなしていけば、思考のパターンを身につけられるだけでなく、様々な英語の語彙もだいぶ身につき、使いこなせる英語が増え、自分の考えを正確に伝えられる表現を習得できるようになっていく。

そのほかに効果のあるもの

 エッセイ対策として、そのほかに効果的なのは辞書の例文などの英文を音読すること、よい文章を読んでインプットし、自分で使えるようにすることだ。
 覚えたらすぐに使って身につけていく、それの繰り返しだ。

 そのほかに効果的なのは、実は国語の試験対策だ。ニューヨーク学院の国語の問題には、同じような問題が出るからだ。
 2016年の国語の問題には以下のようなものが出題されている。

1.便利だが欠点もある
2.不便だが良さもある
について、1、2、どちらでも良いが、あなた自身の経験、もしくは実感した話(見たり、聞いたり、読んだりしたことも含めて)を書きなさい。字数は400字以内です。

 日本語か英語かの違いはあるが、自分の考えを述べるという点で求められる回答の形はだいぶ近い。国語の対策が、英語の対策にもなる。

 中学生くらいの年齢では「論理的に考え、書く」という経験をすることが少ないため、最初はどの生徒もすんなり書くことはできないという。だがやり方を知らないだけのため、方法を身につけ、練習を積むことで、きちんとしたエッセイが書けるようになるそうだ。

 慶應ニューヨーク学院で求められる英語エッセイのレベルはかなり高い。だが求められる考え方、論理の組み立て方、そしてそれを英語で伝える力は、受験に留まらず高校在学中、さらにはその後の大学進学や社会人になった後も役立つものだ。

 英語が身につき、慶應大学への進学も約束され、同じような価値観を持つ友人もできる。慶応ニューヨーク学院は、進学先としてメリットの多い学校の1つと言えるだろう。

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