ガンダムが30年ヒットした秘密2(富野由悠季監督)

ガンダムが30年ヒットした秘密の前編はこちら

民主主義と技術がヒットをつぶしている?

 アニメ「機動戦士ガンダム」がロングヒットになったのは、富野由悠季監督をはじめスタッフたちの才能と努力によるところが大きいのは疑う余地がない。しかも、人間対人間、モビルスーツという新ロボットカテゴリーの創出など、斬新さも見逃せない。しかし、ライバルらしき存在は、どれなのか? 探しても見つからない。ガンダムの独走を許してしまった現状について見てみたい。

 「不幸なことが一つあります。デジタル技術が発達して、CGワークに偏りすぎています。年々つまらなくなっているのはデジタル技術のせいかもしれません。デジタルの危険性をハリウッドも日本もあまり認識していないように思います。そのために、スタジオワークが喪失しています」

 人間が作るというよりは、機械や技術が作るというイメージなのか。やはり人間味がどこか少ないと感じるのではないか。ハリウッドのアニメ映画もCGワークが全盛だ。ピクサーを筆頭に多くのCGアニメが生まれ、そしてヒットを飛ばしている。また、次のようにも指摘する。

 「アートやヒットするものは民主主義からは決して生まれてこないと思います。多数決が正しいかといえば違うんですが、全体主義が個人の才能をつぶしている可能性があります。コンピューターはよくできた官僚システム。よくできたシステムは存続を要求してくるんですよね。そして、我々はシステムの中にいるという構図になっています」

 技術偏重、経済性優先。いわゆる効率経営ばかりにとらわれてしまうと、ヒットが生まれにくい環境になるのかもしれない。なぜヒットしたかは結局「理由はわからない」とする富野氏だが、少なくとも技術偏重、経済性優先という環境にはいなかった。独立後にフリーとなって作り上げた原案がガンダムだった。

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