コロナショックの今、知っておきたいキャッシュレス

 世界中の話題はコロナ一色である。感染拡大のペースはすさまじく、重症化する人も多い。4月7日には安倍首相が7都市を対象に緊急事態宣言を行い、感染拡大を防ぐため3つの密(密閉、密集、密接)の環境を避ける等、外出を減らし人と接触しないことを要請した。外出が減り、気が滅入っている方も多いのではないだろうか。

 外出はできないが、どうしても必要なものや欲しいものはある。現金を使わず、人と接触を最小限にして支払いができるキャッシュレス決済が増えたという方も多いのではないだろうか。こんな時だからこそ、改めて「キャッシュレス決済」について注目した。

 昨年10月に始まったキャッシュレス決済利用により最大5%割引されるという消費者還元事業も、今年の6月末で終了してしまう。今後の還元事業や、キャッシュレス決済の将来について見ていく。

目次

キャッシュレスを政府が推進しているわけ

 まず、政府の目標を確認する。経済産業省が2018年に公表した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%とする目標を設定し、将来的には80%を目指すとした。当時のキャッシュレス決済比率がおよそ20%であったことから、かなり高い目標と言える。

 同じく2018年に発表された「未来投資戦略2018」では、「IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能、ビッグデータ等の新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、社会的課題を解決することで新しい社会への変革を図る」と公表。その重点目標として、キャッシュレス(フィンテック)が取り入れられた。

 つまり、キャッシュレス化の推進は、日本経済の潜在力を底上げする成長戦略の重要な柱として位置づけられているのだ。また、来日する外国人の利便性向上によるインバウンド消費の増加など、実利でもメリットが大きい。消費者や店舗側にとっても様々なメリットがある。以下に、簡単な例をあげる。


キャッシュレス決済の現状

 キャッシュレス決済比率は今後上昇していくのは間違いないだろう。しかし、政府が目指す目標の実現には、かなり時間がかかると思われる。キャッシュレス決済比率について、世界各国と比較していく。



※経済産業省「キャッシュレス化に向けた国内外の現状認識」より筆者作成(中国のみ2015年のデータ)

 経済産業省のレポートから作成したグラフだ。政策によりどれだけこの比率が伸びたかは今後検証していく必要はあるが、海外のキャッシュレス先進国からはかなり出遅れていることがわかる。

 日本でなかなかキャッシュレス決済比率が高まらない理由は何か。考察になるが、一番の理由は「現金主義であること」だろう。海外では現金に対する信用が低い国もあるが、日本では絶対的な安心感がある。お年玉や結婚式など、現金を使う文化が根付いている。クレジットカードで支払うよりも現金による会計の方が早く終わることもある。店員の釣銭の計算も早く、信頼できる。日常生活に深く結びついている現金に対して、その結びつき以上のメリットやデメリットが無いと、日本のキャッシュレス化は進まないだろう。

7月以降のキャッシュレス事業

 総務省は、マイナンバーカードを取得し、キャッシュレス決済に利用することで「マイナポイント」を付与する制度を導入すると発表した。入金に対して、25%(最大5000円分まで)のポイント還元を受けられる仕組みである。なお、オリンピック後の景気刺激も兼ねて2020年9月から始まる予定だが、延期になったこととコロナウイルスの影響も甚大であるため、予定通り始まるかは不透明だ。

 この制度は還元率が25%と非常に高く、マイナンバーカードを保有していないと対象にならないため、開始直前でマイナンバーカードの申し込みが殺到することが予想される。マイナンバーカードの交付枚数は3月1日現在およそ1973万枚で、普及率は15.5%程度だ。今回のマイナポイント事業と、さらに来年3月からは保険証としても使えるようになるため交付枚数は今年7月末に3000-4000万枚、来年3月には6000-7000万枚に増えると想定している。発行には1-2か月かかるため、早めに申し込みをしたほうが良いだろう。

コロナショックの今、知っておきたいキャッシュレスまとめ

 キャッシュレス化は、間違いなく今後拡大していくだろう。コロナウイルスによる外出自粛により、多少ペースも速まるかもしれない。だが、今のままでは政府の2025年までに40%という目標には届かないと思われる。

 今回の消費者へのポイント還元制度は、その目新しさやお得感からある程度の効果が期待される。今後、還元事業が終了した後どれだけキャッシュレス決済を続ける消費者が残るか検証していく必要がある。

 マイナポイント事業で先延ばしにすることはできるが、ポイント還元以外にキャッシュレスの利点を感じてもらい、長期的に利用者を増やさないと意味がない。そのために、店舗側のキャッシュレス導入のコスト引き下げやビッグデータに関する規制緩和といった、一時的ではなく、将来本当にキャッシュレス化社会を実現することのできるような取り組みを考えていく必要があるだろう。

 AIやビッグデータ、5Gなど技術は日進月歩で進化している。決済についても同様だ。世界の進歩に取り残されないよう、キャッシュレス社会が日本でも実現される未来を願っている。

ヘッジファンドダイレクト株式会社からの情報提供

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