コロナショックで稼いだヘッジファンド7選

今回は、3月末までのパフォーマンスを見て「大きく値上がりしたヘッジファンド」7選をみていく。以前戦略別のパフォーマンスを解説したが、実際にどんなヘッジファンドが値上がりしていたのか具体的に紹介する。40倍に値上がりしているファンドもあり、暴落に備えたい運用を求めている方は必見だ。


①ルネッサンス・テクノロジーズ

ハーバード大、マサチューセッツ工科大で数学教授を務めた経歴もあるジム・シモンズ氏が設立したルネッサンス・テクノロジーズは、旗艦ファンドであるメダリオンが4月14日までに手数料控除前で39%のリターンを上げた。クオンツ運用による機動的な戦略が功を奏したようだ。メダリオンは1988年に運用開始したファンドだが、手数料控除後の平均リターンは39%にのぼる。ジム・シモンズ氏とルネッサンス・テクノロジーズについてはこちらの記事で詳しく紹介している。

②パーシング・スクエア

アクティビスト(物言う投資家)のビル・アックマン氏率いるパーシング・スクエアは、2700万ドルをCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)によるリスクヘッジに投じた。企業のデフォルト率の急増に伴い、これが26億ドルの利益となった。3月のみで11.1%のリターンを計上し、第一四半期は3.3%のプラスで終えた。

※CDSとは、信用リスクをヘッジする際に用いられる取引。毎年プレミアム(保険料)を支払う代わりに、倒産や支払い不履行などの信用イベントが発生した時に利益を得ることができる。

③ユニバーサ・インベストメンツ

3月末までで4,144%と驚異のリターンを記録したのがユニバーサ・インベストメンツのブラックスワンファンドだ。リーマンショックを予言したベストセラー『ブラックスワン』の著者ナシーム・タレブ氏が顧問を務めるヘッジファンドで、「アウトオブザマネーのオプション」を買う戦略をとっている。これは権利行使価格を下回るオプションのことで大きく相場が変動しないと利益にならない手法だが、こうした株価の急落時には無類の強さを発揮する。

※白鳥は白いのが当たり前だが、黒い白鳥が発見されたことから「確率論や経験からは予測できない極端な事例が起き、周囲に多大な影響を与えること」をブラックスワンいう。リーマンショックやEU離脱、トランプ大統領当選などがこれにあたる。

④クレスキャット・キャピタル

S&P500指数が30%以上下落した2/20~3/20の間に、クレスキャット・キャピタルは40.5%のリターンを記録した。創設者のケビン・スミスは2年前から株式に弱気で、ファンドの半分を現金で保有、残りを金・銀に投資することで今回の利益につながったと述べている。20年以上の歴史を持つヘッジファンドだ。

⑤ロングテール・アルファ

アメリカのロングテール・アルファはPIMCOで500億ドルの資産を運用していたビニアー・バーンサリ氏が2015年に立ち上げたヘッジファンドだ。テールリスク(確率的に極めて低い暴騰・暴落)に備える戦略を取っており、3月末までに400%の利益を上げた。

⑥ラッファー

ボラティリティが低いときにVIXオプションを大量に買うことから「50セント」という愛称でも知られるロンドンのヘッジファンドであるラッファーは、3月のみで3.6%上昇した。VIX指数に投資しており、26億ドルの利益を得たようだ。
ラッファーは25年以上の運用実績があるが、手数料控除後で年平均8.8%のリターンをあげている。常にリスクに備えることで、安定的な運用ができているファンドだ。リーマンショックに続き、今回のコロナショックでも安定性を示した。

⑦オデイ・アセット・マネジメント

ロンドンの著名なファンドマネジャー、クリスピン・オデイ氏の運用するオデイ・ヨーロピアンは、3月のみで21%、年初来で6.5%のリターンを記録した。株式ロングショート戦略を用いているが、オデイ氏は「弱気派」として知られる。相場が堅調に推移する時は苦戦も強いられたようだが、ショートポジションを拡大したことが今回のパフォーマンスにつながった。

目次

暴落時に強いヘッジファンドの特徴

ヘッジファンドの具体例を調べることで、暴落時に強いヘッジファンドの特徴が見えてきた。以下にその特徴を上げる。

①テールリスク(ブラックスワン)に備えるファンド

ユニバーサ・インベストメンツやロングテール・アルファのファンドがこれに当たる。このタイプのヘッジファンドは、運用戦略というより「保険」のイメージが近い。コストを支払って今回のパンデミックのような大暴落に備えることで、それ以外の資産のリスクを大幅に高めた運用ができる。
ユニバーサによるとS&P500指数に96.7%、ユニバーサファンドに3.3%の割合で投資するポートフォリオは、S&Pが12%下落した3月にも値下がりせず、過去12年の試算でもS&Pを上回るパフォーマンスだった。

②リスクが適切に管理されているファンド

ルネッサンス・テクノロジーズとラッファーが該当する。データ分析をもとに最適な資産配分を行うルネッサンス・テクノロジーズと、常に暴落に備え長期的に安定した運用を行っているラッファーとそれぞれ特徴はあるが、どちらもリーマンショックとコロナショックをものともせず値上がりを続けている。

③ファンドマネジャーの手腕

以前から暴落を予想していたクレスキャット・キャピタルとオデイ・アセット・マネジメントと、今年に入り暴落に備えリスクヘッジを行ったパーシング・スクエア。違いはあるが、どちらもファンドマネジャーが適切に相場を予測し動いた結果としてリターンを計上した。まさに「運用のプロ」といえる。

おわりに

ヘッジファンドにもそれぞれ投資戦略があり、ファンドマネジャーの考え方は千差万別だ。自分のポートフォリオを考えたうえで、最も適したヘッジファンドを選ぶようにしたい。

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