富裕層は長生きできない!?【その2】

 外は春雨で、3月とは言えないほど寒い夕暮れだ。この原稿を書いているのは、銀座のホテルのラウンジ。生演奏のジャズが耳に心地良く響く。2階のバルコニーから演奏しているので、ナイフやフォークと皿が触れ合う音と一体になり、ライブ録音のSACD(最近ハマっている高音質CDフォーマット)を聞いているみたいだ。リクエストもしてないのに、僕のお気に入りのビル・エヴァンスをやってくれている。

 今日のオーダーは、このホテル特製の美しい姿で凛としたボトルに入ったガス抜きのミネラルウォーターだ。このラウンジの日本伝統美をモチーフにしているインテリアデザインと絶妙なデザインハーモニーを奏ででている。椅子の張地も着物からインスピレーションを受けたと思われる松、藤、梅の柄だ。「デザートや御食事はいかがですか?」というホテルマンの誘いを軽く受け流す。だいたい昨日から大学が春休みで、僕は軽いウォーターファスティング(水だけの断食)に入ったところだ。

 たいていの日本のホテルのラウンジで、<120歳まで健康で長生き>の基準で食べられるものはとても少ない。1つ席をおいて、2人のご婦人が熱心に何か語りあっているのが耳に届いた。年のころ70歳ぐらいだろうか。両方とも前かがみ座り、あまり健康そうには見えない。ラウンジの暗い照明を差し引いても、顔色はすぐれない。どうも病気ネタで話が弾んでいるようだ。「あなた、脳の病気とガンとどっちがいい?」と問いかけると、もう1人黒のレザーハンチングをかぶった婦人が「脳の病気はつらいらしいしね……ガンも嫌ね……」と。

 ちなみに彼女たちのオーダーはこのホテルご自慢のケーキセット。甘そうなショートケーキをつまみながら、さらにたっぷりの白砂糖とリッチなクリームを入れている。日本の女性は世界レベルでみても、長生きすると言われている。だが病院や薬に頼らず、本当に健康に生きられている人はこの国の健康保険の危うい状況からみても、かなり少ないのではないか。高学歴の政治家も、そろそろできそうもない公約を掲げる前に、国民のライフスタイルを分析してみれば、どうして福祉や健康保険に膨大なお金を投じなければならないか、簡単にわかりそうなものだが……まああまり期待しても悲しくなるか……。

 前回のコラムでおすすめした本を読んでいただいた方は、話がわかりやすいと思うが、病気の原因はライフスタイルに依るところが大きい。よくガンは遺伝とも言われるが、多分家族で同じように食事をし、寝て……のライフサイクルや内容の影響が多くあると思われる。もちろん僕は医者ではないので、公的には大きい声ではいえないが、まあ賢明な方は大方想像つくだろう。もともと日本人が大河ドラマの龍馬の時代に、アメリカ文化を受け入れてからライフスタイルが激変した。日本は質素なライフスタイルをみごとに否定し、西洋の特にアメリカ文化が高級で素晴らしいと、富裕層から教育された。

 今巷で流行っている、マクロビオテックだってもともとほとんどの日本人が本来自然にやってきたことだ。ちょっとここで簡単に用語の説明をしておこう。既にご存知の方も多いと思うが、マクロビオテックとはもともと古代ギリシャで使われていた言葉で、「大きな宇宙や自然のあり方に適応した生き方」の意味。

 基本的には、玄米を主体に、居住する土地でとれた季節の作物、海からは海藻などをシンプルな味付けで調理したもの。肉、魚、卵、乳製品、白砂糖などはほとんど使わず、もちろん化学調味料も使用しない。元々日本人が発想したマクロビオテックだが、はじめは海外でブレイク。逆輸入で日本に登場した。インターネットで検索すればわかるが、都市部にはかなりの数のマクロビオテックレストランがある。海外のセレブでは、マドンナがマクロビオテックのプライベートシェフを雇っていたのが有名な話。

 ホテルのラウンジもバータイムのなって照明が落とされ、キャンドルが配られ……お後がよろしいようなので……今日はここまでに。


マクロビハンバーグ

ミニコラム【プロフェッサーの呟き】

 確かにマクロビオテックの玄米菜食で、健康になられた方も多いとおもいますが、最新の情報では、マクロビ(略)の食事は生きている酵素が不足すると言われています。基本的にマクロビは、カラダを冷やすと生のメニューを嫌います。マクロビなら食事前に生搾りの野菜ジュースやサラダが必須のようです。僕の経験上、体重を気にされている方も、そうしたほうが効果的にダイエットになります。

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