世界一周豪華客船の船医の一日(2)

 船旅に慣れた方は、別として、初めて長期のクルーズに挑戦する方は、日本船をお勧めします。外国語が堪能でも、体調不良の状況を外国人の医療スタッフに伝えことは難しいため、日本人の医師が船医の日本船の方がなにかと、融通が利くことが多いからです。

 ワールドクルーズクラスの客船には、クリニックがあり複数の医師と看護師が交代で勤務しています。


 待合室や、処置室・レントゲン室・人工呼吸器・心電図といった、普通のクリニックに負けない程度の設備が備えられています。また簡単ではありますが、血液検査や尿検査も出来るようになっています。旅行中に肺がんや、大腸がんが見つかったケースもあります。点滴や簡単な怪我の手当や、投薬も可能な体制になっていますが、歯科医療や、大がかりな手術は出来ないと考えてください。

 大きな声では、言えませんが、霊安室も備えられています。

 診察室はクリニックであり、船内で対応出来ないケースもあります。緊急性の高い時には、航路を変えたり、ヘリコプターを使って最寄りの港の病院に搬送することもあります。

 100日程度の長期クルーズになると、体調を崩すことは、珍しいことではありません。
私の関係するワールドクルーズでは、乗船客の30%~60%、平均すると50%程度の乗客が1航海で、診療所を利用しています。

 患者さんの年齢は、70代が一番多く、年齢と共に受診率は下がる傾向になります。船医は乗客だけではなく、乗組員の診療も担当します。

 特に衛生状況の悪い寄港地に寄った後、寄港地が多くなった時、つまり東南アジアや、中近東辺り、観光名所の多いヨーロッパの後半戦や、海が荒れると患者さんが増え、忙しくなります。

 次回はクルーズ中に多い病気や怪我についてお話したいと思います。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる