世界一周豪華客船の船医の一日(最終回)

 豪華客船には、フィンスタビライザーという、横揺れに対して自動で、船体横に取り付けられた羽の角度を変えて横揺れを小さくする装置が付けられています。そのため、他の船よりは横揺れがしにくいとは思います。


 フィンスタビライザーは「横」揺れ防止の装置であるため、「縦」揺れには効果がほとんどありません。しかし、大きな船でも、まったく揺れない船というものは存在しません。10万トン超のクルーズシップで何度かクルーズしましたが、波が高い時はやっぱり揺れます。航行中もそれなりに揺れます。重心を低くして船幅を広くすると、揺れにくくなりますが、あまり大きくすると、パナマ運河を通過できず世界クルーズが難しくなります。

 そのため、階層が高く、背高のっぽの客船が多いのはそのためです。パナマ運河を通過できる船のサイズは、船幅:32.3メートル、長さ:294.1メートル、喫水:12メートルとなっており、その最大サイズでパナマックスと呼ばれています。

 船酔いは、船が移動しているのに、脳が自分は静止していると錯覚してしまうことで起きると言われています。そのため感受性の高い若い女性に多く、高齢者に少ないと言われています。

 船旅は年を取ってからの方が楽しいのかもしれません。乗り物に酔いやすい人は、停泊中の揺れで調子が悪くなる人もいます。市販の酔い止めも効果が期待できます。船内の診療所に相談するか、乗船前に購入しておいてください。生姜やペパーミントは、吐き気を緩和する効果があると言われています。

 満腹や空腹になると酔いやすいので、悪天候やうねりが強いと予想される日には食事の量に注意してください。お酒を飲むと、どっちで酔ったか判らなくなりますので、控えた方が無難です。気分が悪くなったら甲板に出て、新鮮な空気を吸って、遠い水平線を眺めるとよくなることがあります。

 乗り物酔いは、バス、タクシー、飛行機で起こることがありますが、インドやエジプトで象やラクダに乗って、気分が悪くなった患者さんの話を聞いたことがあります。車は助手席・バスは真ん中・船は中央・飛行機は主翼の近くが揺れにくいと言われています。旅の乗り物酔いは、付きものと言えます、注意してお出かけください。

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