株価が急落すると注目されることが多くなるヘッジファンド。ヘッジファンドのすべての戦略が株式相場の下落時に強いわけではありませんが、一般的にどんな相場環境でも利益を狙いにいくのが「ヘッジファンド」です。この記事では、ヘッジファンドの仕組みと投資信託との違いについて解説します。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドとは、さまざまな取引手法を利用してマーケットが上がっても下がっても利益を得ることを目的としたファンドです。ヘッジファンドは、1949年にアメリカで誕生しました。
ヘッジ(hedge)とは日本語で「避ける」という意味で、相場が下がった時に資産の目減りをさける運用を行うところから用いられています。
日興リサーチセンターの調査による と、2021年12月末時点におけるヘッジファンドの運用残高は2兆4372億ドル(約270兆円)でした。また日本経済新聞では昨年の10月時点で460兆円を超えているとの報道もあります。
ヘッジファンドの運用資産、4兆ドル超え
世界のヘッジファンドが拡大している。米ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、10月に運用資産が初めて4兆400億ドル(約460兆円)と大台を超えたもよう。
日本経済新聞
そして、ヘッジファンドの2021年のリターンは10.3%となり、2009年以降で 3番目の好成績でした。
ヘッジファンドと投資信託の違い
ヘッジファンドと投資信託は、運用をプロに任せるという点では同じですが、運用方法や対象の投資家などで大きな違いがあります。
普通の投資信託は「公募投信」といって、一般の投資家に募集を行います。一方のヘッジファンドは「私募投信」で、限られた投資家のみが出資して運用するファンドがほとんどです。ヘッジファンドに投資するのは機関投資家や富裕層など一部の投資家のみなのです。
ヘッジファンドと投資信託の違いをまとめると、以下のようになります。
ヘッジファンド | 投資信託 | |
収益目標 | 絶対収益 | 相対収益 |
成功報酬 | あり | なし |
運用対象 | 伝統的資産だけでなく、先物やオプションなどのデリバティブにも積極的に投資 | 株・債券などの伝統的資産 |
対象投資家 | 富裕層・機関投資家 | 一般投資家 |
具体的に投資信託とヘッジファンドの違いについて解説します。
収益目標
投資信託は「相対収益」
投資信託はマーケット環境に応じて投資比率を変えるようなことはせずに、常に資産いっぱいに株式などに投資するのが一般的です。そして、投資信託の運用目標は「ベンチマーク」を上回ることです。
ベンチマークとは運用指標のことで、日経平均株価やS&P500種株価指数などの株価指数やなどがあります。株式市場が下落していても、ファンドの運用成績がベンチマークを上回っていれば優秀と判断されるのです。
ですから、投資信託を運用するファンドマネージャーは、ベンチマークを上回るような運用を行います。このようにベンチマークと運用成績を比較することを「相対収益」といいます。
ヘッジファンドは「絶対収益」
一方のヘッジファンドは、相場が上がっても下がってもプラスのリターンを狙います。これを「絶対収益」といいます。「絶対」とは必ず利益を上げるという意味ではなく、比較対象がない状態で利益を目指すという意味です。
また、投資信託は運用内容や投資対象に厳しい規制がありますが、ヘッジファンドは運用の自由度が高いのが特徴です。とくにヘッジファンドが得意としているのが下落相場です。先物や信用取引を駆使し、マーケットが下落する環境でも利益を狙いにいきます。
通常の投資信託では「安く買って、高くなったら売る」という運用しかできませんが、ヘッジファンドでは「高く売って、安くなったら買い戻す」という運用が可能なのです。
手数料体系の違い
投資信託とヘッジファンドは手数料体系も違います。
投資信託の手数料
投資信託には、主に以下の3つの手数料がかかります。
1.購入時手数料
投資信託を購入するときにかかる手数料で、通常0~3%かかります。
2.信託報酬
投資信託を保有している間ずっとかかり続けるコストで、0.5~2%程度かかります。
3.信託財産留保額
投資信託を解約するときに投資家が支払う費用で、通常0.3%程度かかります。ただ、信託財産留保額を差し引かない投資信託も多くあります。
ヘッジファンドの手数料
ヘッジファンドの年間の管理手数料は2%程度なので、投資信託の信託報酬とあまり変わりありません。ただ、運用によってでた利益に対して20%の「成功報酬」がかかります。たとえば、1年間で1億円の利益がでた場合、ヘッジファンドは2,000万円の成功報酬を受け取れるのです。
運用益をだせばファンドマネージャーの収入も上がるので、運用の大きなモチベーションになります。そして、数億~数十億の報酬を得ているヘッジファンドマネージャーも多くいます。仮に優秀な運用能力のあるファンドマネージャーが投資信託の運用とヘッジファンドの運用をする場合、ヘッジファンドの方が稼げるという点では有利となります。実際ヘッジファンド業界は人材確保が難しくなってきており、ファンドマネージャーの確保に苦労しているとの報道もあります。
世界のヘッジファンドマネージャーランキング
投資信託のファンドマネージャーも年収数千万円から数億程度と高収入ですが、世界のヘッジファンドマネージャーは桁が違います。フォーブスによると、2018年のヘッジファンドマネージャーの年収ランキングは以下のようになっています。
1.マイケル・プラット 20億ドル(2,000億円)
ブルークレスト・キャピタル・マネジメントを運営。「リスク管理の達人」として有名です。「続マーケットの魔術師」では、ドローダウン5%以下で年率14%のリターンを上げるファンドマネージャーとして紹介されています。
2.ジェームズ・シモンズ 18億ドル(1,800億円)
ルネッサンス・テクノロジーズを1982年に創業。ジェームズ・シモンズは元数学者で、定量的手法で運用を行っています。そして、従業員とオーナーのみの資産を運用している「メダリオンファンド」が大きな運用益を上げています。
3.デビッド・テッパー 15億ドル(1,500億円)
1993年にアパルーザ・マネジメントを創業しました。行き詰った企業のディストレス債やジャンク債、先物・オプションなどへ投資しています。カーネギーメロン大学に6,700万ドルを寄付し、2018年にビジネススクールを設立してことでも有名です。
運用対象と投資家層の違い
ヘッジファンドに投資できるのは、富裕層や年金基金、機関投資家など一部のプロの投資家のみです。そして、数千万円から数億円が最低投資単位として決められています。一方の投資信託は一般の投資家が対象で、通常は1万円程度、ネット証券を利用すれば100円から購入できます。
また、投資信託の投資対象は株式や債券などの伝統的資産がほとんどですが、ヘッジファンドはデリバティブや信用の売り(空売り)などを駆使します。
ヘッジファンドの運用開示は限定的で、投資家に多くの情報を提供することはありません。ただ、成功報酬を設定したり自己資金も投資したりして、ファンドマネージャーと投資家の利害を一致させるような仕組みを導入しています。
ヘッジファンドの主な戦略と構成比
ヘッジファンドの主な戦略別構成比は、以下の通りです。

出典:日興リサーチセンター
株式ロング・ショート 32.8%
株式が値上がりしても値下がりしても利益を狙う戦略。値上がりを期待する株式をロング(買い)、値下がりしそうな株式をショート(売り)します。株式ロング・ショートはヘッジファンドの代表的な投資戦略で、運用資産全体の約3分の1を占めています。
マルチ・ストラテジー 14.2%
ヘッジファンドの多くの運用戦略に分散投資し、リスク軽減を図る手法です。似たような運用手法に「ファンド・オブ・ヘッジファンズ」がありますが、「ファンド・オブ・ヘッジファンズ」が異なる運用会社が運用する様々なファンドに投資するのに対し、マルチ・ストラテジーはひとつの運用会社が行なっている様々な戦略に投資します。
アービトラージ 10.0%
アービトラージは、コンピューターで求めた理論価格と市場での価格差に着目した取引で、割安な方を買って割高な方を売ります。そして、両者の価格差が縮まったときに反対売買して利益を確定させます。
まとめ
投資信託では、投資家が自分でマーケット環境を判断する必要があります。たとえば、米国株に投資するファンドを購入していた場合、相場が下がりそうだと考えても、ファンドを売却しなければ相場全体の下落の影響を受けてしまいます。
しかし、ヘッジファンドはファンドマネージャーの判断で株式の保有比率を下げたり、先物や信用取引の売りを利用したりして値下がりをヘッジし、場合によっては利益を狙いにいきます。
したがって、投資家の方でマーケット環境を分析する必要はありません。もちろん、ヘッジファンドも毎年必ず利益をだすわけではありませんが、どんな相場環境でも利益を狙いにいくという特徴があるのです。
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