4.6億円脱税で「ヒルズ族」から工場に戻った男

10億円で止めるなんて無理

 「距離を感じた」


 現在、磯貝氏に仕事を発注してくれるという同業者は古くからの知り合い。しかし、六本木ヒルズに住んでいた当時は、お互いに連絡を取り合っていなかったそうだ。その理由が、上記の言葉の中に凝縮されている。

 生活費は月あたり10万円未満。出かけることもなく「物欲も起きない」そうだ。ほとんどが納税となって消える上に、会社の所得税、住民税も消えていく。10億円でやめておけば、今もこんな生活を送る必要がなかったのではないか?

 「10億円で止められるか? それは、絶対にできないですね。次は100億円っていうように種銭が大きくなると、それは無理です。1億円を超えたあたりからイケイケになっていました。逆に地道に稼いでいくと、お金って使えないものなんですよ」

 今は本業一筋のために、残り20年はある返済計画をまっとうするだけだ。返済すべき金額はあと2億円強も残っている。

 「後悔というよりは、今は同じことを繰り返さない、と思っています。100万円くらいで、自殺する人も多いそうですが、人生を諦めないで、と言いたいです」 

 これから20年は長い。しかし、取材中、不思議と後ろ向きな言葉はまったく出てこなかった。完済は55歳以降になる見通しだが、意外にもっと早くなるかもしれない。

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