「普通の不動産会社」になる
もちろん公平な評価をするために、今後にとって不安な点も挙げておかなければならない。天才亡きあとにありがちな問題が出てくると思われるが、不動産業界関係者が、以下のような点を指摘する。
◆天才の後は誰も継げない
辻真吾社長が、創業家以外から初めてトップになることについては、2つの意味があると言われている。一つは、収益規模に見合わない巨額の負債を一掃し、娘むこである浩生専務につなぐというセットアッパーの役割だ。
しかし、ここに来てもう一つ新しいことが言われており、業界関係者によると、総合力で浩生氏よりも、森氏の下でプロジェクトをともに長年戦ってきた辻氏を選んだということだという。「ただ、それでも森さんとは雲泥の差があります」と言う。
◆借金は「顔」でする?
17年、これはアークヒルズ、六本木ヒルズともに着手から竣工までに掛けた年月だ。純利益70億円に比較して、約7400億円の有利子負債を抱える森ビルに、今後このような長期プロジェクトを推進していくことは難しいと思われている。
「森さんの顔でここまで来れたようなもの。金融機関もあまり思い切った事業に融資はしないだろうと思います。残念ながらどんどん、普通の不動産会社に近付いていくでしょう」。さらに具体的には今後は、ナンバービルの切り売りなどもあり得ない話ではない、と指摘する。
果たして、不動産業界から、森氏を超える天才が出てくるだろうか。森氏亡き後、強くそれを痛感させられる。