「サイボーグ」化する老人、「姥捨山」と化した病院

患者を無視してでも治療せざるを得ない事情


 このように患者/家族に苦痛を強いる事も多く、年金の半ば不正受給としても利用されている現在の終末期医療ではあるが、医療従事者側にも延命せざるを得ない事情がある。

 たとえ患者やその家族が苦痛を伴う医療に反対したとしても、医療の縮小は将来的に訴訟となるリスクが付きまとう。患者自身が意思疎通出来ない場合は尚更である。遠戚に至るまで親族全員の同意がなければなかなか医療の縮小を行う事は難しい。

 医療提供者側にとっても、医療を継続する事の方が遥かにリスクが少ないのが現実なのである。

 もちろん、病院経営の面から言っても医療を提供するに越したことはない。地方の病院には入院患者の平均年齢が90歳に達しているのではないかという病院も多数存在しており、病院と老人ホームを行き来させる終末期の医療行為が病院経営及び職員の生活の糧になっているのも事実である。

 「そうは言っても胃瘻を造らないと、自分が食べていけない」

 これが医師の間から漏れてくる本音だ。そして本人の意向とは関係なくいつ終わるともしれない「サイボーグ」としての日々がスタートする。

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