大学は運用でなぜ大損したか

「正体不明の取引」

 為替デリバティブとは、為替相場の変動による損失を回避するための外国通貨に関する取引。取引の契約条件では、為替が一定の範囲内に収まっていれば、買い手側(大学)が受け取る金額が多くなるが、急激な円高に振れてしまうと、買い手側が大きな損失をこうむることになる。

 大学側は「それまで取引していたデリバティブ取引を比較しても想像を絶するもので類例がなく正体不明の取引」と訴状の中で主張している。後から「正体不明」と呼ぶ物に対して、駒澤、愛知の両大学ともに米ドル物と、豪ドル物で20年以上の長期契約を結んでいるのだ。それぞれ追加担保を入れて、最終的には解約の違約金は数十億円に上っているという。

 「大学の運用は理事会の委託を受けて経理課長が現場の責任者としてやっています。ただ、普段は入試の検定料を計算したりする経理事務の責任者です」(前出職員)だという。さらに「私立大学というのは、意外に業界としての横のつながりがあまりありません。営業マンに『●●大学さんもやっていますよ』などと言われると、背中を押されてしまう可能性はありますね」と続けた。

 多くの大学は為替デリバティブに投資する前に、債券のデリバティブを行っていた場合も多いようだ。利益が出ていたために、似たようなものと思い込んでしまったのだろうか。それまでの安全確実な運用方針を守るリスク感覚は、麻痺していたのかもしれない。

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