家からパンツがすべて消えた
「誰かをチャーミングにするということが仕事選びの基準でした。大好きだった美容師に戻ることも考えましたが、美容師は自分がやらなくても沢山います。でも、こんなに快適な物が広まっていないのはオカシイし、また自分がやらないと日本のふんどしという文化が廃れてしまうと考えたのです」
過去にはステテコが流行したこともあった。やり方次第では、ふんどしをもっと広めて行くことができるはずだと思っていた。行き着いたのが、ファッション性を高めて、男性だけでなく女性にもアピールしようということだった。
経営コンサルタントだった目から、ふんどしという事業を第三者として見て「『その市場で儲かるんですか? やめた方がいいですよ』と言いますね」と、ダメ出しした。
市場規模は前述したように、3億円足らずと推計されるほど小さい。しかし、起業とは未知の領域に挑んでいくからこそおもしろい。
「逆に素人だから良かったのかもしれません。アパレルの知識があったりすると、できなかったのかもしれません」
中川氏はパンツを捨てて、全てをふんどしにした。もう、家には1枚もパンツはなくなっていた。覚悟の決別だった。