破綻するブラック企業の楽しみ方(1)

役員の尊大さが代理店の反乱招いた

 「何よりも、そのような自分勝手な行動に走る可能性があった経営者たちを、当社の代理店にしてしまったことが残念でなりません」

 社員数1200人。平均年齢30歳。この発言に違和感を抱いた社員も少なからずいたが、多くの社員は社長発言を自己正当化の根拠にして、担当業務の在り様をかえりみることに、心をむけなかった。ある幹部社員は回想する。「代理店を上から目線で見る体質があって、我が社に楯突くとは恩知らずだと受け止めた社員が結構いました。役員たちの尊大さが若い社員を増長させていましたね」。

 この会社には数年前から、赤字が続く複数の代理店からクレームが寄せられていた。代理店契約時に提示されたモデル収支と実績値との乖離がこれだけ開いたのは、根拠にとぼしいモデル収支で契約させられたからではないか。代理店サポートの担当者の業務はチェックシートを照合するだけで、経営指導と呼べるものではない。本部に支払う指導料に正当性や合理性はあるのか。おおかた、そんな内容である。

 一般に、モデル収支との乖離幅がマイナス20%なら代理店側も経営努力の問題と受け止めるが、これが30%に開くとモデル収支に疑問をもちはじめ、40%以上におよぶと不満や怒りに転化する傾向がある。

 このチェーンでは、40%以上のケースが続出していたのだった。だが、役員たちは真摯に受け止めずに、依怙地になって反発していたと、中堅社員は打ち明けた。

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